2011-01-01から1年間の記事一覧

焼け野原の不在/メタボリズムの未来都市展

twitterに投稿した森美術館「メタボリズムの未来都市展」関連のツイートを転載します。本来ならばまとまったエントリにすべきなのですが、諸事情で時間がとれず。※1月8日のツイートを追加しました。 メタボリズム展、思うところあれど展示としては充実して…

変化しないために変化し続ける倫理は普遍へと至るか・内海聖史展

表参道void+で内海聖史「シンプルなゲーム」展。三坪の会場の正面の壁に、縦に細長いパネルを基底材とした絵画が12分割されて設置されている。パネルごとに基調色が定められている。青、紫、赤、黄と光がプリズム分解されたように並べられるが、キャンバス…

世界を豊かにする抽象・小林達也「モトメヨ ステヨ」展

那須の殻々工房で小林達也「モトメヨ ステヨ」展。絵を描く気持ちよさというのがある。別に難しい話ではなくて、感覚としては子どもの泥遊びとか水遊びに近い。ひんやりとした、あるいは生暖かい水溶性のものを、手に一杯つけて紙や壁に塗りつけていく行為。…

アートプログラム青梅・絵と文字と記号の重なり或いは絵画以外の拒否

アートプログラム青梅2011「山川の間で」展、青梅市立美術館の展示室でO JUNの作品をほとんど初めて見た。名前だけは聞いたことがあった作家なのだけれども、今まで作品を見る機会がなかった。ボード状になった紙に色鉛筆やクレヨン・パステルなどで描かれて…

絵の具と一体化した描きが産む色彩と明暗・野沢二郎展

コバヤシ画廊で野沢二郎展。野沢氏は描くことで「描くとはどういうことか」を問う作家で、恐らく本人はそういう言い方を拒むだろうが、基本的にモダンな画家なのだと思う。野沢氏の画面にはロスコを想起する色彩があり、部分的にはリヒターかと思わせるマチ…

超お化け屋敷・横浜トリエンナーレ2011

横浜トリエンナーレ2011「OUR MAGIC HOUR−世界はどこまで知ることができるか?−」。この催しが特に水準の高いアートイベントではないことを指摘しても仕方がない。かつて椹木野衣は現代美術を「東京ディズニーランドと勝負できるか」と言ってみせてカウンタ…

夏の楽園の記憶・京都国立博物館「百獣の楽園」

夏に京都国立博物館で「百獣の楽園」という展覧会を見ていた。同館の収蔵品の中から動植物や昆虫をモチーフにした作品を猿、小獣、虫、魚といったおおまかな分類で分けて展示したもので、とりたててコンセプチュアルという程でもない、ある種の「ゆるい」展…

21世紀のレオナルド的発電/東京藝術発電所

東京藝術大学美術学部構内絵画棟、大石膏室アートスペースで東京藝術発電所というプロジェクトを見て来た。I, CULTURE PUZZLEという国際的な文化交流活動の一環で行われた、漆作品展「生まれなおす工芸:福島の漆」への照明電力供給をアーティストによる発電…

剥がされた壁と強度のない「べちゃ」/masuii R.D.R 大川祐 展

twitterに投稿したmasuii R.D.Rの「今、生きているということ -大川 祐- 展」を、以下にまとめます。こういう試みは今年2月の上田和彦氏の作品について書いたとき(http://bit.ly/qDk4VJ)に続き2回目になります。twitterという形式故のレビューになったと…

非ビエンナーレとしての所沢ビエンナーレ

所沢ビエンナーレ2011が終わってしまった。私は一回見に行ったのだが、かなり面白かったので会期中にもう一回は来たいな、と思っていた。しかしかなわなかった。Twitter上での反応を見ると賛否両論で、私はこの反応自体が今回の所沢ビエンナーレの「成功」を…

作品の条件

一般に美術は「閉じて」おり、それを「開く」ことこそが美術家の「善」というイメージがある。だが、この「開く」という行為は理念的に行われなければならない。即ち、美術を「開く」ことは、ある種の閉じた次元を通過しないと実現しない。 「開く」ためには…

「組立」準備対話企画

佐藤雄一(詩人)× 松浦寿夫(画家・美術批評) 『「固有値(Eigenwerte)」としての支持体を自己生成する』可能性 2011年9月26日(月)19:00〜 photographers' gallery 料金:1,000円 定員25名 要予約⇨https://ssl.form-mailer.jp/fms/34f5d1a4162301 電話…

「組立」

有原友一×高木秀典×永瀬恭一 展 会期:2012年3月4日(日)〜18日(日) 会場:HIGURE 17-15 cas http://hgrnews.exblog.jp/ 時間:12:00〜20:00(最終日は17:00まで) 休日:月曜日 地図:http://bit.ly/n6yDcW 公開イベントの開催、書籍「組立」の刊行を予…

次期「組立」開催のお知らせ

「組立」専用ブログより引用します。以下の企画を公開します。

繋がってはいけないものが繋がるとき/映画「ナゴシノハラエ」

大原とき緒監督の映画「ナゴシノハラエ」を渋谷UPLINKで見ることができた。ホームページ(http://www.uplink.co.jp/factory/log/004028.php)に記された紹介文を以下に引用する。 「私の恋人は兄だ」衝撃的な告白から始まるこの映画は、これまで描かれてきた…

羽釜の思い出。

・私と配偶者、幼稚園に通い始めた長男で暮らす家の台所に昨晩、羽釜が来た。実はこの羽釜は私も知らなかった「いわくつき」だったらしい。 ・「いわく」は知らなかったが、この羽釜自体はイヤになる程見覚えがある。今は誰も寝起きしなくなった、私の実家に…

消す力と描く力の応答/児玉靖枝 「深韻 2011 -わたつみ-」

恵比寿のMEMにて児玉靖枝 「深韻 2011 -わたつみ-」展。僕が児玉靖枝という人の作品を初めて見たのは1995年の「視ることのアレゴリー」展(セゾン美術館)で、その、大胆なストロークと、キャンバスの白あるいは拭き取られた中間調子の鮮烈さが印象に残った…

感情と形式が結びついたリズム/芸大コレクション展

東京藝術大学大学美術館で「芸大コレクション展―春の名品選」。同時に開催されていた「香り かぐわしき名宝展」は興味なかったのだけれども、国立西洋美術館でレンブラントを見た後iPhoneでチェックしてみたらコレクション展だけなら300円で見られる、と分か…

間接性が育む親密さ・レンブラント光の探求/闇の誘惑展

国立西洋美術館で「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」展を見て来た。レンブラントの銅版画に焦点を当てた展覧会で、すごく充実していた。レンブラントの銅版画の魅力はもっともっと知られていいと思うし、その力はおよそ一般的な版画というイメージを超えて…

フェノメナルなプラネタリウム/ART TRACE GALLERY・高木秀典展

両国のART TRACE GALLERY・高木秀典展。この展覧会に展示されている作品は3系統に分けられる。 アクリル板のブロックが4つ、壁面から浮かされて菱形に並べられた作品 正方形のアクリル板が裏面に、十字の星型(手裏剣のような形)にマスキングされてスプレ…

生まれ直す色彩の飛び出し/なびす画廊・杉浦大和展

京橋のなびす画廊で杉浦大和展を見て来た。私は2004年から(1回くらい見逃しつつ)年に1度の杉浦展を見てきている。そして氏の作品について一度も文章を書いたことがない。今まで杉浦氏の、キャンバスに油絵の具で描かれた絵画を形式的に記述し、そこで引き…

暴走する自転車小屋の夢

自転車小屋を作った。市販されているキットで、昨年の今頃作ったデッキに比べればまったく楽な仕事なのだが、こういう、地面に建てるもので一番大変なのは基礎作りになる。上の構造物が倒れないように、ある程度丈夫に、かつ水平・垂直の精度を下げないよう…

詩の切開する場/サイファー(Bottle/Exercise/Cypher vol.7)

恵比寿で行われていた詩人による朗読イベントのサイファー(Bottle/Exercise/Cypher vol.7)に行ってきた。 ●4月29日(祝)のサイファーへの呼び掛け(下記に各国語訳あり) http://d.hatena.ne.jp/CAMPCYPHER/20110413 今日は午前中から家の自転車小屋を…

未来に届く確信/フェルメール地理学者とオランダ・フランドル絵画展

Bunkamuraで「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画」展。フェルメールの「地理学者」は2000年の大阪市立美術館「フェルメールとその時代」展で見て以来の再見になる。 フェルメールは妙な危険性を持っていると私は思う。それを見た人は何か…

現代が剥ぎ取られた現代美術/MOTアニュアル「世界の深さのはかり方」

東京都現代美術館でMOTアニュアル2011「世界の深さのはかり方」を見てきた。この展覧会は2011年2月26日から開始され、5月8日まで展示される予定だが、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって一時展観が中断され、今でも開館時間が変則的に改定されて…

絵画と見るものの間で交換される揺れ/有原友一展

今年(2011年)3月11日、私は都内のビルの4階で東北関東大震災を体験した。この地震と、その後の繰り返される余震が一方的・暴力的な「揺れ」の感覚なのだとするならば、ART TRACE GALLERYで開催中の有原友一氏の作品が与える「揺れ」は、見る者-それは一義…

さらに付記

書本&cafe magellan様より営業再開のお知らせがありました。 http://magellan.shop-pro.jp/

付記

なお、仙台にて書籍「組立」をお取り扱い頂いていた書本&cafe magellan(マゼラン)様(http://magellan.shop-pro.jp/)はご無事とのご連絡を頂きました。営業の再開はいまだ未定とのことですが、ともかくも被災地の皆様に平穏が訪れます事を祈念いたしてお…

書籍「組立」の売上寄付に関するご報告

昨年、人形町Vision'sにて開催した第3回「組立」(http://kumitate.org/)に併せて発刊した書籍「組立」(http://kumitate.org/book/)の売上残高10万円を、日本赤十字を通じて東北関東大震災義援金として寄付しました。 ●日本赤十字社・東北関東大震災義援…

この場所でのシュルレアリスムの不可能性、あるいは岡本太郎の虚無に至る道

国立新美術館でシュルレアリスム展。私はシュルレアリスム、というものがよくわからない。個々の作品の魅力が分からない、ということではない。また、定義や意義がわからない、というわけでもない。シュルレアリスムは日本で、この種の西欧の美術ムーブメン…