津上みゆきの絵は高度でえっち。

ギャラリー山口(http://www.jade.dti.ne.jp/~g-yama/)で津上みゆき展。今回の展示作品ではないけど、こんな感じの絵を描く人。http://cubicgallery.cside.com/tugami2.html

津上みゆきの絵は、なんか、えっちい。ただえっちいんじゃなくて「とてもえっちい」。なぜかと言えば、えっちいのと同時に、とても知的で上品だからだ。
知的で上品で、しかもえっちい。これは最強じゃないですか。もう辛抱たまりません。これ見てクラっとしない人は病院行こう。いやマジで。

知的ていうのは、コムズカシそうだとかそういうことじゃない。描くことで考えているということがわかる絵画だ、ということだ。そこには試行錯誤がある。引き直される線があり、探られた面があり、途中でうっちゃられた色があり、思わぬところから展開していったマチエールがある。そういう「描く思考の軌跡」が、1枚の画面にある。

上品、というのは、この作家のもって産まれた資質なのかもしれない。画面から、なんとも言いようのない「姿勢のよさ」みたいなものが感じられる。その基底には、多分、「まっすぐな正しさ」みたいなものがあるのかもしれない。自分が絵を「描いてしまう」ということに、しっかり向かい合ってて逃げてない感じ。上品さというのは、実は強さなんじゃないか。

そして、えっちいというのは、生命力の強さと、安定できない弱さが入り交じっていて誘惑的だということだ。この人は、なんか姿形にならないものを抱えていて、それが筆を動かしてるのかもしれない。その力が止まらないという強さと、それをどう制御していいのか確定できないという不安定感が魅惑的で、つまりえっちい。美術を見る人というのは、みんなカッコつけたがりだし、作家本人にしてもこんないわれ方をされたくはないだろうけど、でもしょうがない。「官能的」なんてもってまわった言い方では納まらない生々しさが有ると思う。

津上みゆきの絵を見るのはVOCA展京都造形大卒展(招待出品)に続いて3回目なんだけど、この人の絵はだんだん洗練されつつある気がする。多分、「手数」はVOCA展の時が一番多くて、それから1枚あたりの作業量は減ってきてる印象がある。でも、作品の強度は落ちてなくて、ものによっては上がってる。たぶん、必要なものがはっきりしてきて、夾雑物が減ってきてるんだろうな。今回の展示でも、入口入ってすぐ左の壁面にある、たぶん一番手数のかかってない作品がよかった。

それと、蛍光色が強く出てきていることに関して、もしかして批判的な声はあるのだろうか?ないか。だって、この使い方は完璧だもんな。こういうペインタリーな絵って、「渋くて深い色」で描くという妙なイメージがあるけど、そんなことを一顧だにしない津上みゆきは、あっさりとぺらぺらの蛍光色をバーンと使う。僕達は工業製品と印刷物とテレビの世界に住んでいて、そこでは「渋くて深い色」なんかより蛍光色の方がリアルで身近だ。同時に僕達は、なんだかんだ言って生の物質を抱えながら生きてる。どんなに美しい商品に囲まれていても、血と肉でできた体を捨てたわけではない。そういう場所から描けば、ペインタリーな絵画に蛍光色がはったりではなくリアルに乗せられていても、不思議はないと思う。

最高のサッカー選手の素晴らしさは、素人にもわかる。ロナウドのしなやかさも、ジダンの強さも、中田の賢さも、一目でわかる。そして、同時に彼らの抽象的な高度さというのは、玄人も唸らせる。優れた絵画も、そんな作品のはずだ。津上みゆきの絵は、絵を見なれている人にも、そうでない人にも、どちらにも届くと思う。

津上みゆき展はギャラリー山口で11月29日まで。
104-0031 東京都中央区京橋3ー5ー3 京栄ビル1F
TEL 03-3564-6167
時間 午前11:00-午後7:00
最終日土曜日5:00まで
休日 日曜日"