空間のヌード

ギャラリー山口・下薗城二展(http://www.gaden.jp/yamaguchi/2003/031117b.htm)。
すべての場所がぺらぺらになりつつある。清潔なコンクリートとプラスチックとガラスとステンレスで包まれた風景。そういうものを否定する表現というのはたくさんある。下町の風情が注目され、田舎の懐かしさが強調され、山や海の豊かさが賛美され、ヨーロッパの深さが再発見され、アメリカの強さが喧伝される。

でも、僕達が実際に取り囲まれている、今この場所の貧しさというものを、正面切って認めた表現は少ない。1Fで津上みゆき展をやってるギャラリー山口の地下スペースで開催中の下薗城二展は、都市のマンションや建築物の表面(タイルで覆われた壁やトタン)だけを、モノクロ写真で撮影している。会場には、ほとんど表情がない「ただのマンションの壁」や「ただの倉庫の壁」が、回りの風景を入れこむことなく提示されている。深さも高さも広がりもない、表情も感情もない写真。なのになんでこの写真はこんなにも迫ってくるんだろう?

たぶん、それは、この写真が、僕達の生きている世界のヌードだからだ。例えばアラーキーの撮る都市の風景には、彼の生きてきた時代を思わせる「温かさ」がある。高梨豊の撮る都市には優しさが、エルスケンの撮った東京には生々しさがある。だけど、僕達の生活している都市には、もうそんなものは残されていない。もしそういうものを感じさせる写真があるとしたら、それは、どこかで演出されている。服を着飾っている。

けど、下薗城二の写真には、そんな服を脱いでしまった、あからさまに貧しい肌を曝した都市のヌードが写っている。このヌードに興奮するには、成熟がいる。無駄にしなを作って加工されたイメージの世界のヌードに飽きてる人は、きっとその肌のリアルさにグッとくると思う。

info
下薗城二展 11月22日まで
MAP http://www.jade.dti.ne.jp/%7Eg-yama/guide/gui_map.html
東京都中央区京橋3ー5ー3 京栄ビルB1F
03-3564-6167
午前11:00-午後7:00 最終日土曜日5:00まで
休日 ・日曜日"