マンハッタン・ラブストーリー#9

今回はつまんなかった。シリーズ最悪の出来ではないか。
まとめに入ってるということなのか?しかし別にまとまってない。エモヤン(酒井若菜)と土井垣(松尾スズキ)に決着がついたのは先週だったし、妙に土井垣が「男」を見せたことで丸く収まるというのがつまらない。むしろダメッぷりを徹底的に加速して、エモヤンの父親を呆然と煙りに巻くくらいが、本来土井垣のあるべき姿ではないか。しかも、良く台詞を聞けば、土井垣はぜんぜん「男らしく」ない。たんに逆ギレしてるだけだ。あんな台詞で納得してるエモヤンの父親もエモヤンも土井垣も、「面白いバカ」ではなく、たんなる「本物のバカ」だ。

ベッシー(及川光博)と千倉(森下愛子)の決着?が今回の主軸だったらしいが、どうも?マークが消えない。要は現状維持じゃないか。で、結局結婚はしないということは、ベッシー/千倉のカップルは消えたってこと?曖昧だなぁ。
だいたい千倉が逃げの結婚から「仕事」を選んだからって、どうだって言うんだ。なんとなく収まりのいい、オチらしい結論をくっつけただけじゃないか。ここだって話の持って行き方が「攻め」じゃない。千倉は傲慢の限りを尽くして、ベッシーを奴隷として結婚で縛って、さらに他の男と遊んだり土井垣にちょっかいだしたりしながら、その非道っぷりを脚本のネタにして喰ってく位でちょうどいいキャラなはずだ。ほぼ蛇足と言えるエモヤンと土井垣のシーンを削れば、そのくらい書き込む時間的余裕は出来たはずだ。

一事が万事この調子である。どっかで見たような恋愛ドラマの結末を、適当に薄めてまとめっぽく取り繕ってるだけだ。こんなのマンハッタン・ラブストーリーじゃない。まとめるな、と言っているのではない。上記のように、各キャラの特性を限界まで高めて(悪化させて)まとめる、という方法が取れたはずなのだ。視聴者のモラル感覚に配慮したとか、フザケタ事は言うなよ。5%だぞこのドラマの視聴率は。モラルが気になる数値じゃないだろう。というか、5%の視聴者をなめてもらっては困る。この5%は「濃い」5%なのだ。おためごかしのマトメなんか、この5%の人間は期待してない。無茶の限りを尽くして、視聴者の甘い期待なんかブッチぎった展開をして、初めて納得する5%なのだ。

恋愛ドラマに対する批評をしていた筈のこのドラマが、恋愛ドラマに頼っている。あと2回、この方向性で終わったなら、マンハッタン・ラブストーリーは視聴率でもドラマとしてでも、単なる失敗作となるだろう。

唯一のすくいは、今回も忍くんである。あいかわらず可愛い。最高だったのがベッシーとのダンスシーンだ。軽井沢夫人(遠山景織子)のダンスのヘタっぷりも、ある意味天才的なものがあったが(どうやればあんなに一生懸命へたに踊れるのかが謎)、忍くん(塚本高史)も、「大丈夫か?!」といいたくなるぎこちない踊りだった。演出なのかワザとなのか、あるいはマジでやばいのか。しかし、可愛い。そこが可愛い。

しかもお母さん(!)が岩松了である。岩松了と言えば、知るひとぞ知る大脚本家である。竹中直人と組んで「東京日和」のホンを書き、竹中の舞台のホンも書いている。他にも片桐はいりの舞台脚本、蜷川幸雄の舞台脚本と、演劇界では知らない人がいない。それが、「おばさん役」でTVドラマ。これはマニアックではあるが大事件である。しかしなぁ、松尾スズキ岩松了がイロモノ芝居をブラウン管でやるなんてなぁ。

今後のマンハッタン・ラブストーリーの可能性は、忍くん関連にしかないかもしれない。あ、あとイボリー。頑張れ。