森美術館全体の印象

森美術館全体の印象です。
汐留のジャン・ヌーベルによる電通本社ビル並みにアニメチックな六本木ヒルズの外観は、なんというか、とりあえず笑えます。というより、ここで笑えない人は、この先があんまり楽しめないでしょう。無理にでも1度指を指してゲラゲラ笑ってみることをお勧めします。僕のように、埼玉から御のぼりしてきて、無意味に六本木という場所にビビリ入ってる人のリラックス策としても有効です。

六本木ヒルズ本体ビルのわきに、美術館+展望台用に別の入口があります。会場は本体ビル52Fなんですが、オフィスメインの本体ビルに直接お客さんを流し込まず、別の動線に誘導するというのは、良い手だと思います。
なんでかというと、現代美術を扱う展覧会としては、異例の観客数なんじゃないかというのが、会場を見た感想で、いろんな意味で、普段美術に興味のない人でも、ここには足を運んでいるという印象をもちました。当然六本木ヒルズという話題の場所なので、地方からの東京観光のお客さんも多いみたいで、会場のあちこちで「方言」を聞くことができます(EX.えーお土産なんにするベーか?)。これは案外楽しいです。

スタッフは良く訓練されていて、好印象です。女性を含めてみんな黒スーツにインカムつけて「御案内という名の家畜誘導」をしてますが、ここは無意味に暴れたりしないで、大人しく従いましょう。畜群の1匹に堕するのも時には楽しいものです。
最近の美術館では無料のロッカーがあるところがほとんどですが、ここにはそれがありません。動員数を考えてのことでしょう。暖かくなってきたことですし、軽装で行くことをお勧めします。荷物が重いと、辛い広さです。

開館時間が月・水・木 10:00-22:0、 金〜日・祝前日 10:00-24:00 、火 10:00-17:00 (いずれも入館は閉館の30分前まで) というのは、美術館として画期的でしょう。本来都市型の美術館というのはこうあるべきだと思うのですが、なにぶん客がいない現代美術界ですから、最近は東京都現代美術館を含めて、閉館時間は軒並み早まっているのが現状です。逆を言えば、「美術館というより観光地・イベントパ−ク」という森美術館の性質を端的に示しているわけですが、最初の話題性が薄れたあと、客足が落ちついた時にどうなるかは心配です。

混雑の程度ですが、僕は土曜日の午後6時前に入場したので、ピークは過ぎている感じでした。チケットを買うのに数分、エレベータに乗るのにも数分並びましたが、イラつくことはありませんでした。美術館のチケットで、展望台にも入れますので、夜景を楽しむという意味でも、この時間帯はお勧めです。ちなみに52Fに上がるエレベ−タでは気圧変化で耳が痛くなりますが、適宜耳抜きしましょう。高速エレベータとは思えないスムースな加速と減速は、昨今の技術革新を感じられるポイントの1つです。

52Fに着くと、展望台・草間弥生展・クロッシング展と、3つの入口に向かう動線がありますが、一番目立つのがクロッシング展会場へのエスカレーターです。展望台や草間弥生展を先に見たい、あるいはネームバリューの低い美術家のグループ展に興味ない人は要注意です。
僕は展望台を先に見ました。さすが地上52Fの東京都心の夜景は圧巻です。建物が最新技術で作られているせいか、外壁が非常に薄く、ガラス1枚向うはもう奈落の底という感じで、新宿の古い超高層ビルより余程高所恐怖症が味わえます。ここの混雑も、僕が行った時はソコソコで、多少待てば窓にへばりつけます。1部フェンスが張られた「外」のデッキに出ることができ、都心のこの高度には、こういった風景と風と音が拡がっているんだなーと思うと、なかなか感慨深いです。人によっては、なまなかな現代美術より、こちらの体験の方が感覚にビビッドに影響するかもしれません。
ちなみにここでは飲み物が売られています。ジントニック(ビフィータ)が700円です。

忘れてはいけないのが、このフロアではもう一つの美術展、「MAMプロジェクト・サンティアゴ・ククル」展がやってることですが、夜景優先でこの時間は照明もつけてもらえず、ちょっと埋もれてしまってました。作家としてはちょっと可哀想でした。気がついた人は、足を留めてみてください。

で、次はいよいよ草間弥生展です。