切断する笑い

これまた終わってしまった展覧会なんだけど、水野圭介・矢尾伸哉展「resonance room」を、Gallery ART SPACEで見てきました。

水野圭介氏の作品で気になったのは、会場の片隅におかれた小さなモニタの映像です。一見、男性がパソコン(恐らくappleeMac)を前に何か文章を打っているだけの映像が映っています。
「ふーん…で?」としか思えないのですが、改めてよく画面を見ると、何か違和感を覚えるというか、へんな感じがします。
ん?なんなんだ?
一瞬後、その原因がわかりました。

「二人羽織り」なんです。
映像中で、パソコンの画面を見ている人と、キーボードを叩いている人は別人なんです。
わかります?
パソコンの画面を見ている人の背中に、大きな「羽織り」がかぶさっていて、その「中の人」(文字どおり中の人です)は、まったくパソコンの画面を見ないまま、羽織りから腕だけのばして、キーボードを打っているんです。
で、作品のタイトルが「ブラインド・タッチ」。

これは笑いました。
この「笑い」は、いわゆる「楽しい美術」、観客を笑わせて共感を得る美術とはまったく異質です。
むしろ、観客の「思い込み」、ぱっと瞬間で見て、その視覚をまとめてしまおうとする視覚の既成概念を壊し、切断することで結果的に生じる笑いです。
実際、観客がこのことに気づいて笑うかどうかは未知数です。
「騙された」としか思わない人もいるのではないでしょうか。
しかし、その人を騙したのは、その人の視覚の既成概念です。
そのことを提示されて、不快感を持つ人だって、いると思います。

いわばフルクサス的な笑い、視覚と観客の「連帯」、美術と観客の「つながり」を切断する笑いなんです。

どうでもいいけど、今日はなんで改行が多いんでしょう。
別に意味はないんです。
宇能鴻一郎が乗り移ってるだけなんです。