オノ・ヨーコ展「I LOVE U」

表参道の360°ギャラリーでは、オノ・ヨーコ展「I LOVE U」がひっそり?行われてます。ビックネームの展覧会のわりに、なんかちゃんと広告されてるのかな?何も知らずに入ったらいきなりオノ・ヨーコ展やっててビックリ。僕が情報にうといだけですかね。MOTで大規模なオノ・ヨーコ展(http://www.mot-art-museum.jp/ex/plan_h16-01.htm)やってるのは知ってたんですが。

「I LOVE U」というアルファベットの形にくり抜かれたアクリル板が、白い紙に重ねられています。会場には色とりどりのサインペンやボールペンが置かれていて、アクリル板の「I LOVE U」とくり抜かれた部分に色を塗ったり模様を描いたりできます。「U」の前には、オノ・ヨーコ氏の手で彼女のイニシャルである「Y.O.」が描き加えられており、全体にオノ・ヨーコ氏と観客の手によって「I LOVE YOU」という言葉が完成する形になっています。

1960年代以来、何度も製作されている作品で、ジョン・レノンとの出会いの場となった個展でもこのバリエーションの作品があったそうです。この作品が、今も作り続けられていることには、十分な背景があります。それは単なる大物作家の懐古的再製作ではありません。1960年代から今まで、オノ・ヨーコ氏は「I LOVE YOU」というメッセージを、観客と共同で「作り続けなけらばならなかった」のです。

この展覧会には、なまじっかな若手作家の展示よりも、遥かに今行われる意義、しかも緊急な意義があります。あなたがペンを持ってこの作品に手を加えることは、単純な「観客参加型作品」を楽しむということには納まらない筈です。それは一種の祈り、どのような宗教にもできない、全ての人に参加可能な「祈り」となるでしょう。

そのようなささやかな「祈り」が、今すぐ何かを変えるわけではない。今後も変えられないかもしれない。そのような無力さは、オノ・ヨーコ氏も十分以上に認識しているでしょう。しかし、たとえ何があろうと、オノ・ヨーコ氏は祈り続けるでしょうし、しかもその祈りに我々を誘惑し続ける筈です。そしてその誘惑に心動いてしまう人々がいる限り、絶望はありえない。彼女は今後もこの作品を「作り続けざるをえない」でしょう。そしてその作品に参加する人がゼロにならない限り、この半ば永続的な製作は、アクチュアリティを失わない筈です。これも会期終了間近。

オノ・ヨーコ展「I LOVE U」

  • ギャラリー360゜
  • 東京都港区南青山5-1-27
  • アクセス 地下鉄「表参道駅」より徒歩1分
  • 電話番号 03-3406-5823
  • 会場ホームページ http://www.360.co.jp/
  • 〜5月30日(24日は休みです)
  • 時間 12:00 - 20:00