サトエリ1枚300万円!

「現代美術アーティスト村上隆氏(42)の「サトエリKo2(ココ)ちゃん」が都内で発表」
http://www.nikkansports.com/ns/entertainment/p-et-tp0-040521-0011.html

見に行く。見に行くぞー。しかし、原価考えたら300万は安くないですか。小山登美夫ギャラリー
http://www.tomiokoyamagallery.com/kaisaichu.html


しかしなぁ。このタイミングでサトエリ。国内的には見事なプロモーションだよなぁ。あと六日で公開のキューティーハ二ーはキャシャーンの影に隠れて苦戦しそうだけど、大丈夫?まさか庵野秀明監督も、キャシャーンが上映期間延長するとは思わなかったろうけど。個人的にはサトエリの変身シーンより、及川ミッチーのナルシズム全開ブラック・クローが注目ぽいんとですが。
この長ーい予告編が笑えます。http://www.fukubiki.com/srepre/part02_movie.html


村上隆氏の仕事では、僕は1990年台から2000年くらいまでの絵画作品が素晴らしいと思っています。理由は簡単で、この人はいざ絵画となったら、古今東西あらゆる絵画を参照し、応用し、そして表層に「オタク」を持ってきます。そこには深い絵画の教養があって、ぶっちゃけ表層がオタク要素でなくてもいいくらいなのです。


過去数百年単位の絵画史(日本もアメリカも、たぶんヨーロッパも)を正確にリファレンスし、高い技術で工芸的に仕上げられていた一連の絵画作品を見ると、この人は本性が画家だよな、と思います。


ところが、絵画以外の仕事は、イマイチなのです。フィギュアやらなんやらは、そのリファレンス元がせいぜい戦後50年程度のサブカルチャー+「現代美術」になってしまいます。数百年と数十年。このバックグラウンドの差はデカイです。正直、巨乳で童顔のオンナノコの等身大アニメフィギュアとかバルーンとかは、インパクトはあったものの飽きました。


村上隆氏はプロモーションとマネジメントに関しては天才なので、そっちの「事業」が楽しくて、比較的地味な「絵画」からはリターンが少ないと踏んだのでしょうか。


もっとも、美術というのは、歴史的に見れば、十分ジャーナリスティックなものだった筈です。布で股間を隠されてしまったミケランジェロシスティーナ礼拝堂天井画。ゴヤの「裸のマハ」と「着衣のマハ」。デュシャンの階段を降りる裸体。今の美術界が失ったスキャンダリズムというのを、村上隆氏が一身に体現しているという面はあるのです。


でも、僕には村上隆氏が「絵画」から、すなわち彼の「本性」から逃げているように思えます。先述のように、村上隆氏は絵画の仕事においてこそ、「美術/美術史」と、正面切ったバトルを繰り広げます。それは確かに高度に複雑な作業であり、その割に市場のリアクションが期待できない。しかし、このまま行けば、彼の作品−フィギュアとかバルーンとか−は、村上隆氏の死後、確実に値段が下がります。作家が生きていてアクションを起こしている間はいいのですが、「歴史」の審判を受けるようになったら、スキャンダリズムだけでは生き残れない筈です。


村上隆氏が、美術史の名において「勝つ」気があるならば、多分あらゆるマネージメントを捨てて、絵画に没頭すべきです。そして、この才能が絵画に集中した時、そこにはゴヤが死の前に館にこもって制作した「黒い絵」を超える水準の絵画が出現するはずです。


ただし、そのバトルは、確実に村上隆氏の生命を削るでしょう。もしかしたら、村上隆氏はそこまで見通して、十分美術の世界でプロレスしまくった後、満を持して山ごもりして、見事な最後をとげるというビジョンがあるのかもしれません。だとするならば、そこまでの階段を村上隆氏がどう登るのか?やはり、目が離せない作家であることは間違いないでしょう。