唐招提寺展

サテュロスと同じく国立博物館です。こちらは会期が終わってしまいました。


まずは予備知識。唐招提寺の由来はこちらを。奈良時代に鑑真が開いたお寺だそうです。

仏像と鑑真像についてはこちら。

展覧会全体に関しては、上記サイトのトップから各コンテンツを参照して下さい。

盧舎那仏坐像は極めて正面性の強い仏像だと感じました。全体に幅が広く奥行きがないため、正面から見た時にもっとも美しく見えます。今回の展示会場は奥に盧舎那仏を配し、それを中心に梵天帝釈天、四天王の諸像が配置され、全体に唐招提寺金堂内部の再現を目指していますが(左右の菩薩像2体は出展されていません)、本来この盧舎那仏は金堂外正面の開口部から、ちらりと顔だけ拝するようで、像の造形もそのことを念頭に作られていると思えます。


金堂の修理にあたって外部に出された諸像をこれだけ間近に見る事ができるのは今後ないと思えますので、貴重な体験でした。会場は照明が慎重にセッティングされており、金堂の空間の再現というのは無理だとしても、相応に良い状態で見ることができたと思います。


他に面白かったのは、阪神大震災で金堂の構造が歪み、修理が必要となった原因を明解に説明したCG映像、および唐招提寺境内や御影堂内部を仮体験できるように構成された幅10m、高さ3mの大型スクリーン投影のCG画像です。金堂構造の解説は、実際に歪みを見せる柱の実写も含みながら修理の必要性を分かりやすく伝えていますし、境内の「バーチャル体験」を目指された大画面のCG映像は、ほぼ視界を覆うようなスクリーンによって、分散的に置かれざるをえない各展示物が本来どのような在り方をしているのかを想像させる一助となっています。


この映像のポイントは、最初から人の視界を支配することを念頭におかれて製作されていることで、スクリーンの極端な縦横比もその意図によるものでしょうし、映像もそのレイアウトに沿ったトリミングになっています。客席とスクリ−ンの距離も近いです。で、十分に人の視界の角度に配慮した結果、CG画像でよくみられる3次元パース、1点-〜3点透視による空間再現が、いかに人の視覚から離れた、不自然なものであるかを逆に証明していて、視覚-知覚体験としても興味深いものでした。マテリアルの手触り、いわゆるテクスチャの再現までには至っていないのが残念でしたが、データの重さやハンドリングを考えると、しかたのないことでしょう(それでも映像の密度はハイビジョンの2倍となっているそうです)。今後はこの種の映像は、解像度を上げてなお編集が容易な汎用ハードの開発・普及と、「人の視界」というものの検証(従来の単純な三次元パースの再検討)が課題となるはずです。