バカにもわかる美術の本。(2)

●描くという思考。
描く事で考える、見ることで考えるという、知らない人にはちょっと不思議で、でも知ってみると面白い、美術という思考の形がよく分かる本を選んでみました。画家の本特集です。

去年の西洋美術館の展覧会で話題沸騰?したマチスの書いた本。まさに「描くという思考」のエッセンス。これさえ押さえておけば、こと美術に関する羅針盤は手にいれたも同然。内容は高度だけど、文体は平易だから、とりあえず読んでみよう。え?高い?図書館に行こう。分厚い?通して読もうなんて思わなくてよろしい。気になったページをコピーして持ち歩こう。で、適当に捨てよう。それを何度かくり返すと、いつの間にかあなたの中に「マチスコンピュータ」が組み上がる。

この本に興味を持ちながら、難しそうーと敬遠しているあなた。まぁ読んでみなさいって。面白いから。以前もここで書いたけど、この本面白すぎ。下手なミステリよか数段刺激がある。いや、内容はめちゃくちゃ高級ですよ。でも文章が明解で論理的だから、丁寧に読めば追っかけられる。特殊な用語や文学的な比喩もない。そして、くり返しになるけど、次々に開かれる「美術の扉」が、痛快なくらい読者を新しい世界に連れていく。最初は「なんとなく」でいいから、深い理解とかしなくていいから、まず目を通そう。

文庫だ。買いやすかろう。しかも今国立近代美術館でゴッホ展やってるし。いい機会じゃないでしょうか。ゴッホの事を「キ●ガイ」「単なる激情型のゲージツ家」と思ってる人は目から鱗が落ちるでしょう。勉強家ですよこの人。天才の閃きとか狂気とかの手前には、これだけの思索の積み重ねがあるわけだ。けっこう下世話な話題があるのが面白い。そういう生活の中から紡ぎ出された絵画のなんとノーブルな事か。挿絵もナイス。

  • 「レオナルド・ダ・ビンチの手記」岩波文庫

これも文庫。「ダビンチ・コード」なんていうキワ物読む暇があったらオリジナルを読みなさいって。これは読み易い、分かりやすいとはチと言い難い。なにしろ16世紀の文章だからね。でも、その「違和感」をとりあえずとっておこう。後で書く、パノフスキーとかプラトンとかを読んでから再読すると、その「違和感」が重要なキーになってくる。ちなみに流石万能の天才、絵画に関する記述は一部だったり。でも絵画以外のところも面白いよ。


まだ続きます。そもそも僕にはこんな偉そうなこと書く資格も能力もないんだけど、本来こういう事やって欲しい人がやってくれない。あるいは、そんな人がそもそもいない。blog上でも何人かの方がこの時期ニューカマーに向けて「読書案内」してるけど、みんな文学か哲学、あるいは社会学系。

なんで美術でこういうのがないんだ。だから僕みたいのがやってしまうのだ。人材いないなぁ。美術。