東京芸大の付属美術館で「資料は繋ぐ-名作と下絵・連作」を見てきました。こじんまりとした企画だったものの、面白かったです。入場料300円で、高橋由一の「鮭」と画帳も、狩野芳崖の「悲母観音」+その下絵も見られます。あと美術の教科書に載ってた安井曾太郎の木炭デッサンとか。


変わったところではフェノロサの油彩画が出てます。小さな作品なんですが、なんていうんでしょう「アメリカの田舎をバルビゾン派風にノスタルジックに描いた」みたいな絵で、日本の伝統的美(術)を賞賛し日本画というジャンルを成立させたというイメージからは想像できないくらい「アメリカ人」ぽかったです。ま、これは話しが逆なんで、まさにそういった人物だったからこそ「ニッポンの美」とか言い出すわけですね。

鏑木清方等が動員されて、皇室の祝賀行事の記念品みたいなもの作ってもいて、国の産業政策の一部として立ち上がってきた芸大の歴史みたいなものも感じ取れます。高村光雲の「狸」がキュート。食玩で「近代日本彫刻シリーズ」とかやらないかな。やらないな。


この展示で見られるのは、近代日本美術の課題として、やっぱり海の向こうから印象派前後のものをどーんと一気に技術導入して、それをどう東洋の島国の国民美術としてマッチングさせるのか-油絵の具で東洋人描いて変じゃないようにみせるか、とか-というあたりです。上手くいかないのの筆頭が歴史画と宗教画で、これはもう土台が違うんだからどうしょうもない。苦労の中で怪作もけっこう描かれますが、全体に日本画の方が上手くやってる印象がありますね。結局画材の問題なのかと小一時間。


で、今回の目玉は東京芸大の収蔵品のデータベース。なんとwebで一般公開されてました。僕知らなかったですよ。素晴らしいです。

何がいいって、カラーバーごと撮影されてることだね。原田直次郎の油絵とかはベタですが、榎倉康ニの写真とかあるぞ。


本音を言えば画質がイマイチですけど(サイズもCGFAくらい欲しいよな)、無いよりはぜんぜんマシです。こういうのを日本中の美術館でやって欲しい。で、その各々の美術館データベースを更にまとめて管理するデータベースがあったら、最高じゃないですか。つうかつまんない箱モノ作ってないで、政府及び地方自治体におかれましては、こういうことに金かけて欲しいんですが。会員料金くらい払うよ。ITベンチャーの皆さん、どうです?プレゼンしてさっくり受注してみません?


ちなみに芸大のこのweb版のデータベースは多分派生物です。会場にはものすごい解像度の画像データベースが置いてあって、めちゃくちゃ拡大しながら閲覧できます。ユーザーインターフェースに難アリのシステムですが、これが今回の企画の本丸でしょう。色管理の基準作成と各データの色調整が大変だったろうな。あ、撮影もか。この端末、展覧会かぎりで公開終了じゃないと嬉しいんですが。理想を言えばこの画像データもweb経由で手に入るといいな(光ファイバならがんばればダウンロードできるでしょう)。ストックフォトのDAJみたいなシステムがいいです。参考:http://www.daj.ne.jp/


会員登録しておいて、サムネ−ルには芸大の校章でも入れておく。購入する時は画像サイズが選べて(大中小でいい)、クレジットカードで精算。あ、ジャパネットでもいいぞ。それが無理ならメディアに入れて売ってくれ。あー画集とかの民業圧迫になるのかしら。

展覧会自体も、興味ある方にはお薦めです。会期終了間近。


●芸大コレクション展/資料は繋ぐ ― 名作と下絵・連作