一昨日六本木でギャラリーを見て回ったんですが、OTA FINE ARTSで草間彌生展をやってました。で、そこで展示されていた作品なんですが、以下のURLを参照してみて下さい。

ぱっと見、1960年代から70年代に描かれた「網状絵画」だと思いました。昨年の国立近代美術館の草間彌生展でみたこのシリーズが良かったため、これは意外な収穫だと思いながら、各作品を見たわけです。


でも、ちょっと近付いて見て「おや?」と思いました。白の絵の具が新鮮というか、ツヤツヤしてるんですね。僕が昨年見た近代美術館での「網状絵画」は、絵の具がマットでもっと粉っぽいというか、とりあえずこういうツヤはなかったわけです。グレーの地に白絵の具でUの字を繋げていくような構造で、これも違う。昨年見たものはもっと多方向に拡がっていくような筆致でした。1枚絵の具の濃度が低くてグレーが透けて見え、全体に明度が低い作品がありましたが、これは何か絵の具が銀色めいて見えて透明感があり、油絵の具じゃなくてマニキュアみたいな感じ。画材は油じゃなくアクリルなのでした。


作品リストを見てわかったのですが、全て2001年から今年にかけて描かれたものでした。具体的には2001年のものが3点、2003年のものが2点、2005年のものが2点です。いずれも大きなもので194cmの正方形、小さなもので縦90cmくらい×横70cmくらいでしょうか。こういう仕事を2000年代になってもやってるというのは知らなかったなぁ。


たぶんカナメは60-70年代の作品と共通するところじゃなくて、違うところです。アクリル絵の具によって、全体に作品が軽みを帯びて見えます。絵の具の質感や現実の、例えば100mgあたりの比重とかが油絵の具よりアクリルの方が軽いわけです。あと、大きさですね。かつてのものより小さくなっています(このことも物理的な軽さにつながっているでしょう)。あと、筆致が単純化され、同一のタッチの反復になっています。


クサマ自身によるクサマというか、クサマの本人シュミラクルというか、そんな感じで、最近のクサマの絵画(?)といえば、クサマトリックスの最後の方の展示に見られた「ハーイ、コンニチワ」みたいな、細い線によるなにか分裂的というか、ややグロテスクな感じの図柄が沢山散乱しているものしか知らなかったので、ちとびっくりしました。


草間彌生はもともと、強迫的な反復を作品制作の基点においている作家ですが、そのように反復しながら個々の反復がひたすらズレていって、いつのまにか二度と反復しえないくらいに変化/分岐/分裂していってしまうというところがポイントな作家だと思えます。今回の「(クサマ)シュミラクル」のような「再帰」する作家だという認識はなくて、ちょっと違和感がありました。今回の新作・近作「網状絵画」作品も、かつての自分を反復しながらズレてるんだから、同じじゃないかと言う意見が出るかもしれませんが、草間の反復はひたすら「連続」して行われ、その連続の中でズレが生じどんどん枠組みが移動していく、といった性質のもので、ある大きな枠は保持しながらその中の差異が問題となるようなのは、やっぱり違うと思います。


ま、違うも何も現に描かれているのだから意味ないですが、僕は今回見ることができた作品よりもやはり60-70年代の絵画作品の方が断然良いと思います。興味ある方は六本木までどうぞ。ただ、OTA FINE ARTSのサイトを見ても、会期がいつまでかがわかりません。最初に問い合わせた方がいいかもしれませんね。


草間彌生