雑記

で、忙しがってる中で、連載中のこうの史代/さんさん録を読んだ。アクションなんて初めて買った。

さすがに6Pの連載1話読んだだけではめったな事は言えないけど、まぁ感じたことを適当にnote.


こう、夕凪の街ですっかり悲劇作家みたいになったけど、本来この人はコメディ作家なんだな。こっこさんとか、ぴっぴら帳とか(ぴっぴら帳完結編は未読)。もちろん、悲劇を含まない喜劇はなく、喜劇を含まない悲劇もない、とか言える(こっこさんでは、お母さんの姉の「悲劇」が顔を覗かせる)。

で、さんさん録。コメディなんだけど興味深い。妻を先に亡くした老人男性の日常を楽しく書いてるんだけど、どうもこのジイさん、恋してるんだな。だれかに。

これはほとんど「長い道」の「その後」みたいに読める。道に先立たれた荘介のお話?深読みですか。


主題にも新たな試みがある。こうの史代氏は、少なくとも単行本になっている作品の範囲では「可愛い女性」を描いてきた作家なのだ。乱暴な言い方だけど、絵のレベルでは夕凪の街/桜の国も例外ではない。こっこさんですらそうで、あの主役の小学生の女の子の躍動感は、宮崎アニメーションでの「となりのトトロ」でのメイやサツキとやや似ている。この人の女性へのこだわりはほとんどレズビアン的だとまで思っているのだけど、今回の「さんさん録」では「可愛い女性」が基本的に軸にない(僕が読んだ回はぜんぜん出てこない)。ジイさんの孫娘が出てくるけど、この「女の子」とこっこさんの主人公の「女の子」は、おそらく年齢がほぼ同じだと思えるだけに、その「(絵柄の上での)可愛らしさ」の差ははっきりしている。

要するに、老人の男性が主役ってのはかなり挑戦なんではないかと思うのですよ。なにしろこうの氏の主要な武器である「風になびくスカート」や「髪の毛」が封印されているのだ。 しかも面白い。やっぱこのキャラクターの芯には荘介がいる。で、「長い道」で「こわいの担当」だったのはお道ちゃんなわけで、道抜きのこの漫画は「こわくならない」。すっきり楽しいお話に(今の所)なっている。


今後どうなるかはわかりませんが、このジィさん、なんか死にそうにない。いいぞ。そのままどんどん行け。世間の「悲劇作家・こうの史代」という期待を突っ切ってしまえ。

で、油断した頃また振り子を逆に振ってきそうな予感がするわけだ。あ、なんかすっかりファンだな僕。