雑記。太った。先月、人生最重量を記録してしまった。大学を卒業した頃は52kgだった(演劇をやっていた時は48kgとかだった)体重が、ここにきて60kgを超えてしまった。デブである。もともとチビなので、これでハゲたらチビデブハゲだ。コンプのコンプなんて洒落にもならない。原因ははっきりしていて、禁煙である。昨年11月に禁煙して、その時は体重コントロールも上手くいっていた旨書いたのだけど(参考:id:eyck:20070126)、その後がっつんがっつん太った。なんのことはない、酒量がふえ、それにつれて食べるものも増えたのだ。


酒量の増加は今に始まったことではなく、ことに結婚して晩酌を憶え、寝る前にジンをソーダで割ってから眠るくせがついてからは、毎晩のように飲んでいた。ガラスゴミの日はビフィーターの空き瓶が重くて憂鬱になる程だった。そんなわけで体重は56kgくらいをうろちょろしていたのだけど、禁煙をしたらツマミが増えた。喫煙中はいわばタバコがツマミだったわけだが、タバコがなくなったらベタに食べるものが増えたのだ。まぁあるものならなんでもよろしい、という体質なので(流石に甘いものはやらないが)、漬け物からイカくんからスナック菓子から、なければ自分で料理の1皿くらいは作ってしまう。そしてそのまま寝るのだから太らないわけがない。はけないズボンが増え、会う人会う人に「太ったね」と言われ、配偶者には妊娠でもしたのかと言われながら、なんだか展覧会の予定がちらほらあった今年上半期は、何も節制する気にならなかった。「うきぐも」展が終わったら考えよう、と先延ばしにしていた。で、展示が終わっておそるおそる体重計に載ったら61kgに迫る数値がデジタル表示されてしまったのである。体脂肪は18%。こりゃまずかろうよ。


てなわけでダイエットである。理屈は簡単だ。脂肪を減らしたいのだから食事から脂質を減らす。油ののった肉や魚、調理油を排除する。次に、分解されて脂肪になり備蓄されるもの、つまり炭水化物と糖を削る。これらは本来エネルギー源だが、使われないものが脂肪になる。日常消費する以上のエネルギーをとらなければいい。炭水化物は米、パン、穀類、麺。糖は第一に砂糖。次に果物。トマトなども糖分が高い。問題は、脳の活動には糖が必要だということ、単に絶食すると血糖値が下がり僅かな食事でも脂肪に替え備蓄しようとする身体になるから代謝が衰え太りやすくなる点がある。これらの対策として、タンパクと野菜を中心にした食事を1日3度以上確実にとること。炭水化物、糖が入らない体は脂肪より先に筋肉を分解するから可能な限り運動し、筋肉を維持すること。ごく論理的である。


食べていいのは鶏胸肉とささみ、白身の魚、たまにかつおのたたきやまぐろの赤み。一部の貝、海草。あとは緑黄色野菜、茸、そんなもんである。酒は厳禁。アルコールがあると脂肪が分解されない。これらの材料で構成された食事を1日3度確実にとりながら3週間ほど過ごした。この3週間、というのがネックで、なかなか続けるのは面倒だ。コツは無理しないことである。僕の場合はしなれない運動を無理して増やすのを最初から放棄していた。上記の理屈から、これだと筋肉がおちるわりに脂肪が減らない。だが、完全を求めるのはダイエットにおいて危険だ。だいいち村上春樹のようにマメな体質でもない。僕の場合は、食生活の習慣を変えること、すなわち過剰な糖や炭水化物をタイミング悪く取るのを止め、酒量を削ることを主目的にした。酒なしで眠れる習慣を手にするのがメインテーマだ。あと、社会生活上のつき合いはこなした。具体的には義理の祖母の法事の会食や知人との外食があったが、こういう時に「ダイエット中だから」と言って杯を断ったりせず、相応に飲食した。体重と社会関係のどっちが大事だという判断を間違えるのは良く無い。


あとはおさんどんの工夫である。鶏胸肉だささみだ白身の魚だ、なんていうのを味気なく食べるのも悲しい。多少の塩分過剰は気にせず、たっぷり味付けした。ゆず胡椒と少量の料理酒に漬けた鶏胸肉を蒸し焼きにする、ささみを細かく切って茄子に挟みかつお節と醤油、しょうがをまぶしてレンジでチンする、かつをのたたきににんにくとオイスターソースをからめ春菊とあえる、まぐろの赤身をあぶって三つ葉を添える、etc.のレシピはがんがん研究した。ポイントは香辛料と香味野菜で、これがあるとずいぶん気がまぎれる。みょうがとか。鶏胸はもともと安いが、かつおが安い季節にあたったのは幸いした(やや脂がのっていたのいが痛し痒しだったが)。コストは締めてかからないと普段より高くつきかねないが、たまのまぐろの赤身100gあたり198円くらいは出すつもりもないと切なくなってついビールが飲みたくなって危ない。あさりの味噌汁とかほうれんそうのおひたしとか、罪のない副菜も作ったほうがいい。油断しがちなのが豆腐とかの大豆・まめ食品で、一見ローカロリーに見えて畑の牛肉だったりするから避けなければいけない。生野菜は塩だけで食べるのが辛くなったらノンオイル・ノンシュガーのドレッシングを活用した。


もちろん、どう工夫しようが口は寂しい。腹持ちがしないのもあるし、そもそも「ダイエット中」「禁止事項たくさん」という文脈自体が飢餓感を煽る。僕が頼った嗜好品はキシリトールガムで、四六時中噛んでいた。のども乾くのがダイエットなのだけど、レモン香料をたらしたソーダ水(無糖無果汁)は、ビールが呑めない苦しさを僅かにまぎらわしてくれる。あとはコーヒーで、なにかしら嗜好性のあるものを一ケ所逃げ道に用意しておかないと3週間はもたない。しらす干しとかも用意しておくと気がまぎれる。そんなこんなでまぁ順調に過ごしてきたのだけど、先日の明け方、チーズがたっぷり挟まれた揚げパン(そんなものが本当にこの世にあるのか知らないが)を、アツアツの状態で口一杯頬張って至福の快楽を味わう、という夢をばっくり見てしまい、あ、限界がきたな、と思った。目標に500g程届いていなかったが、この日をもってダイエットを終了した。おおよそ3週間で-5kg、55kg弱まで落とした。体脂肪は11%。こんなもんだろう。問題は維持である。


食事はかなり控えめに御飯を復活させた。おかずは週何日か覚えた鶏胸やささみ・白身の魚を維持しつつ、豚バラやベーコンは排除し(豚バラ・ベーコンは分類すると「肉」ではなく「油脂」である)、なんといっても酒量を押さえている。どうせそのうち展覧会とか迫ればこんな周期は崩壊するんだろうけど、ま、そのときはその時だ。改めて言っておくと、適切な運動のないダイエットは片手落ちだし、過剰なものは危険でもあるんでそこんとこよろしく。