京都・岡山・四国行きが迫って来た。秋口の京都の宿を取るというハードルをこなしたらすっかり気が弛んでしまい、ちっとも準備を進めないでいたらこんな直前になってしまった。以前ここで書いたのと予定が少しずれ、京都に先に行って岡山・琴平と回るルートを設定したのだが、なんだが事実上京都は「狩野永徳展」だけになりそうな雲行きだ。これは準備が途中でストップしたもう一つの理由に繋がるのだが、桂離宮の予約がとれなかった(というかトライもできなかった)のが大きい。考えてみればあたりまえなのだろう。10月下旬の桂離宮なんて、最も人気がある季節なのではないだろうか。キャンセル待ちをする気にもならなかった。宮内庁のサイトを見れば、1日6回、1度に4人しか入れない予約はとっくに一杯になっていた。もう一つ考えていたのが神護寺なのだけど、目玉の伝源頼朝像(米倉迪夫説によれば足利直義像)は5月にしか公開されていないそうだ。これですっかりがっかりしてしまい(いや、二条城とか東寺とかいくらでも他にあるのだけど)、なんだかスケジュールをたてる手が止まってしまった。


平等院だけは見られる(これも季節的に混みそうだけど)だろう。しかし、あとは大覚寺とか相国寺を回ることにしようか。岡山では奈義町現代美術館を見るつもりだから、そこにある荒川修作龍安寺をモチーフにした作品とからめる形でオリジナルを見ておくのもいいかもしれない。ぼんやりそんなことを考えていたらすっかり時間が過ぎてしまった。で、再考してみたのだが、京都を離れて法隆寺中宮寺と奈良の東大寺周辺を見て回ったらどうだろう。なにしろ京都には早朝に着くが、そんな時間にどこも見て回れない。漫然と時間が過ぎるのを待って町歩きしてもかまわないのだが、その間に移動して法隆寺まで行ってしまい、夢殿・中宮寺を見てから奈良に移動、正倉院展はぎりぎり始まっていないのが残念だが、南大門や隣接する興福寺を見て回ると言うのはなかなかトキメク。で、京都へ戻りつつ宇治の平等院を見て、国立博物館で永徳展を見るわけだ。ちょっと各寺院の混雑状況が気にかかる。とくに平等院はかなり混みそうな気がするのだけど、一応平日なのだし、なんとかなるのではないか。


岡山の予定がなかなかマニアックというか移動地獄なのだけど、前述の奈義町現代美術館まで行くことになる。岡山からさらに在来線で1時間かけて津山に行き、そこから更にバスで40分という、まぁなんというか、かなりロンゲスト・マーチな行程になるのだけど、そこまでして行くのは磯崎新の建築を見るのと同時に、荒川修作を見ておきたい、というのがある。僕は過去養老天命反転地を訪れていて、今年の夏には三鷹天命反転住宅を見学してきた。これで奈義の龍安寺を見れば、国内の主要な荒川の「建築的身体」に係わる仕事は見たことになる。名古屋の住宅プランを見ていないのはあるのだけど、いろいろ調べるとここはあまり気軽に見学に行くところでもなく重要度も低いと判断した。一応この3つの作品を見た上で、自分なりの荒川の近年の仕事を(たぶん1960年代の美術と連続する形で)考え直してみたいと思う。荒川修作という人は確かに面白い人で、ICCアーカイブにあるインタビューを聞いたり(参考:http://hive.ntticc.or.jp/contents/interview/arakawa/)、卒業した小学校を訪問して授業するという番組(「ようこそ先輩」だ)で、授業をやって収録して放映した後でその小学校には荒川氏が在籍したことがないことが判明したり(参考:http://www.nhk.or.jp/kagaijugyou/list/list200536.html)と、かなりトバしている人なのだけど、最近妙に過大に語られすぎな気がして不思議な感じがする。三鷹天命反転住宅を見て、その感覚にある程度形が与えられそうな気がしたのだけど、とりあえずは見られるものは見ておくべきだろう。


岡山では以前かいたように市街地に集中している前川國男建築と倉敷の大原美術館、ついでに丹下の倉敷市立美術館とかをふらふら眺めてみる予定だけど、これはあくまでおまけのつもりだ。やはり金刀比羅宮がメインイベントになる。今四国には内海聖史氏がアーティスト・イン・レジデンスで滞在していて、彼のblogによると金刀比羅宮と直島を見て回った旨記述があったのだが、聞いてみたらやはりなんといっても700段あるという階段がハードらしい。とはいえ、いざ登って現場を見ればそれだけの「眼福」がまっているらしく、かなり期待ができるようだ。僕は同時に鈴木了二氏の建築も見て来るつもりで、相応に腰を据えていかないと後悔することになる。長々と乗る電車の中では岡倉天心の「日本美術史」を読むことになるだろう。既にさわりは目を通したけれど、芸大での講義をまとめた内容は古めかしい言葉遣いでも平易で読みやすく、橋本治の「ひらがな日本美術史」の後に読むには最適な気がする(もしかするとこの順序は逆なのかもしれないが)。11月に入れば、野沢二郎氏が展示を行っている五浦美術文化研究所・六角堂を訪問する予定だし(参考:http://www.ibaraki.ac.jp/cgi-bin/info_view2005.cgi?number=1192156801)、併せて芸大美術館でタイムリーに行われている岡倉天心展も見ておきたい(参考:http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2007/tenshin/tenshin_ja.htm)。ただ五浦はこれまた遠くて(http://www.ibaraki.ac.jp/izura/index.html)、この秋は移動の季節になりそうだ。