日暮里・舎人ライナーという電車に、初めて乗った。JR西日暮里駅から少し歩いて、高い場所にある、天井は幕の張られた駅舎で待っていると、都営線のマークのついた小柄な車両が入って来て、乗ったら2人掛けの椅子が全部「後ろ向き」で(つまり進行方向と逆で)、単座の椅子だけが前を向いていてびっくりした。久しぶりに良く晴れた荒川区の町を、高架が縫う様に進んでいって見晴らしがよかったけど、やっぱり「後ろ向き」に進む感じが奇妙だった。多分、都心へと向かう上り路線を中心に設計されたのだろうと推測した。少し行ったところで前向きの単座シートが空いたので移動した。そして、窓から、建設中の東京スカイツリーを見た。春霞のような濁った青空の中に立つ塔は、少し繊細な印象に見えた。荒川を渡って、目的地の最寄り駅に降りて、地上まで階段で下ったら、鉄道の高架が荒川沿いの首都高速の上をふわり、と蛇行しながら乗り越えていて、そのカーブが艶かしかった。迎えの待ち人が来て、最近できた道なんです、と説明されたところを歩いて行くと、この町は空がとても広々と開けていることに気づいた。こせこせと中層のビルがあつまることなく、むしろ虫食い状に土地の空いた所が目立って、再開発がちょっと頓挫したような、変な間を持った土地だった。午後3時過ぎの陽光は温かで眠たい感じで、光の粒子がちょっと大きい。ぼんやりした優しい風景だった。並んで歩く人に向かって私は「なんだか宇宙人みたいなきもちだなー」と言った。

日が暮れてから乗った帰りの日暮里・舎人ライナーは、やっぱり席が後ろ向きだった。つまり上りに合わせていたわけではなかった。また変な気分で座ることになった。夜景にはもうスカイツリーは見えなかった。