サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会は第19日の29日、決勝トーナメント1回戦最後の2試合。1次リーグE組2位の日本(世界ランク45位)は、史上初のベスト8進出を懸け、プレトリアのロフタス・バースフェルド競技場でF組1位のパラグアイ(同31位)と対戦。両者90分間で得点なく、延長戦でも決着が付かず0−0。今大会初のPK戦に突入し、日本が敗れ史上初のベスト8進出はならなかった。(毎日新聞)


サッカー日本代表は素敵な試合をしました。自国代表のサッカーがこんなに面白いというのが、いかに幸福なことか、よくわかりました。私は岡田代表監督の期間中、良いサポーターではありませんでした。今回の代表には、海外のメジャーなクラブで活躍するようなスーパースターがいませんでした。また、ウイットに富んだ名将もいませんでした。そのようなチームが、自らの非力を見極め、しかし前向きな目標をもち、結束して、クレバーに準備し戦ったとき、けしてきらびやかではなくても、魅力的な仕事ができるということを学んだように思います。


私は4年前に以下のように書きました。

もう一つ、日本代表に足りないのは表現力だと思う。昨日のテレビでの中田のインタビュー を見ていて思ったのだが、要するに中田を含めた日本代表には表現する力がなかったのだ。恐らく中田もそこは自覚的だった筈で、だからこそ黙って走り続け る、みたいな話しになってしまっていた。もちろんそれだけでは「表現」はできない。また、単にチーム内で議論するだけでも「表現」にはならない


大会開幕直前から、日本代表は目に見えてめざましくこの「表現力」を獲得したように思います。それは選手相互のコミュニケーションであり、スタッフと選手のコミュニケーションであり、その上に交わされた落ち着いたパスワークでした。このことを持って、成果は主に選手のものではないか、というのは片手落ちでしょう。そのようなチームを成り立たせていたこと全体が評価されるべきだったのでしょう。私にはそのような目はありませんでした。


それでも、そういったことを含めて、日本のフットボールは「素」の姿で戦ったと思います。そして「素」の姿を卑下することなく挑めば、ワールドカップであのような戦いができるのだという事実が理解できました。勇気が出ます。そして、その「素」とは(これも4年前に書きましたが)Jリーグがその土台にあるように思います。自分の地元にあるクラブが魅力的に見える、その延長に世界があるのだと思います。それはけして現状維持でいい、ということではないと思います。具体的には、海外のクラブチームとのシリアスな戦いができる場がもっと必要なのかな、と思います。AFCチャンピオンズリーグFIFAクラブワールドカップ、といった試合がより重要になると思います。また、アジアカップやコンフェデも。


ブラジルは、ドゥンガが「ブラジルらしくない」代表チームを編成していて、寂しいとの声もありましたが、海外からのサッカーファンの希望をとりあえず棚上げすれば、ブラジルがいわゆるブラジルらしさに拘泥することはまったく良くないと思っていたので(例えばジーコが監督をしていたら最悪だと思います。これはジーコが最悪、という意味ではなく、ブラジルらしさという幻想に内閉するのがよくない、という意味です)、現状はとてもよいと思います。その逆を行くのがアルゼンチンで、麻薬常習の長島監督みたいなマラドーナのチームと、どちらが強いかは非常に興味があります。


韓国代表は熱い戦いをファーストリーグからしていました。あと、解説で中田英寿氏が、いわゆるテレビ的パフォーマンスは抜きで淡々と、しかし非常に日本代表をポジティブに見ていたのが印象的でした。この人の立場なら、日本代表が成果を残したことはめちゃくちゃ悔しいことであっても不思議でないとおもうのですが、そこがこの人の視野の広さでもあり、また逆に、サッカー選手としてはある種の限界でもあったのかな、ともつい考えてしまいました。しかし、今はとても開かれた感じでマスコミを通じてサッカーの魅力を伝えていて、見ていて気持ちよいです。


悔しいなぁ。。