家族をいつでも壊せる。べつに、なにか考えがあってそう決意しているのでもなく、不安を感じているのでもない。ただ、さらっと、ある日家に帰らないで、そのまま帰らないで、いつまでも帰らない、ということはあり得るだろうし、それが今日であっても全然不思議がない。そして、そういった事は、配偶者の方にも起こりうるのだと思うし、実際、世の中で、毎日どこかの家庭で実際に起きていることではないかと思う。ある日夫が、妻が、父が、母が、息子が、娘が、帰ってこない。そういうことは単にありふれている事だと思う。私がいなくなれば配偶者はなんとかするだろう。手に職のある人だし、再婚だって可能だろう。配偶者がいなくなったら、私は私でどうにでもできる。育児で出来ない事はない。大体子供は親がいなければ育たないというのは嘘で、むしろ親がいることでスポイルされる可能性だってあるわけだし、彼には祖父母もいる。その方がいい、と思うのなら出て行けばいい。子供は捨てればいい。配偶者とは分かれればいい。自分が捨てられればいい。別れられればいい。こんな事をいうと、いかにも私が風来坊な生活をしているかのように思われるかもしれないが、私ほど毎日確実に家に帰る人間も少ないのではないかと思うくらい、人付き合いがない。一昨日携帯電話を紛失したのだが、あまりに困らないのでこのまま解約しようかと考えている。そう考えると、自分が月に数万円もあれば十分に暮らせることが分かるし、実際そのくらいしか支出がない。作品は新しく描ければいいわけで、だからプライヤーとガンタッカー他いくつかの工具があれば事足りる。筆も使わないからゴムベラがいくつかあればいい。新しく買いそろえたって大した金額ではない。母の住まなくなった実家にいけば雨露は凌げる、どころか普通に製作し生活できてしまう。こういうイメージは昔からあって、結婚しても子供が出来ても変わらなかった。というかそういうイメージがあったから結婚にも子供にもまったく抵抗がなかった。孤独だとか荒れているのかとか思われると困るので、ただそうなのだ。どうにかなるでしょ、という感覚でいると自信家なのか、といわれることがあるけれど、こういうのは自信とはいわない。言ってみれば傾向のようなもので、そういう人間は最初からそうだし家族や財産や地位や立場なんかとは無関係に常にそうなのだし大抵最後までそうだろう。というわけでこれから帰ります。