ボナール論掲載のフリーペーパー「新しき場所」発行・配布のお知らせ

あけましておめでとうございます。

このたび、知人が開設した空間「6号線」に、ボナール論を掲載したフリーペーパー「新しき場所」を置かせていただくことになりました。会場のすぐそばを走る国道6号は、そのまま福島に繋がっています。



向島の商店街にある木賃アパートの2階を改装した小さな場所ですが、非常に魅力的な空間になっていると思います。昨日9日から、オープニング企画として写真展「RECORD 0920 2014」が始まっています。以下、webページ(http://roku888.blogspot.jp/2014/12/record-0920-2014.html?spref=tw)から引用します。

福島第一原子力発電所の事故により、一部区間で通行が規制されていた国道6号線が、2014年9月、3年半ぶりに全線通行可能になりました。
9月20日、友人と国道6号を北に向かい、福島県内で撮影した写真を展示いたします。

RECORD 0920 2014

会期 2015年1月9日(金)- 2月1日(日)
   12:30 - 18:00 
   *金、土、日曜日のみの開催です

場所 6号線
   *写真とその周辺の展示、作業室
   東京都墨田区向島5-50-3
   鈴木荘2階2号室(鳩の街通り商店街内)
   東武スカイツリーライン
   曳舟駅西口より徒歩約7分
   押上駅より約15分

http://hatonomachi-doori.com/access.html



東京造形大学で一緒に演劇をやっていた彼女・彼が、社会に出てずいぶん時間がたった今、改めてこのような場所でこのような試みをする姿勢に共感して、フリーペーパーの発行と配布を申し出ました。
ボナールは以前から気にしていた画家ではありますが、11月にこういう企画が進んでいると聞いて、背中を押されるように書き始めることになりました。15000字を超えて、A3裏表では収まらずVol.1・2同時発行となりましたが、写真を見るついでにお手にとって頂ければ幸いです。以下、本文から一部を転載。

 ボードレールの言う「想像力(未来)」と「記憶(過去)」の交点にボナールはいる。ボナールが保護しなければならなかったもの。おそらくそれは、意外な奥行きと広がり、ボナール自身の言葉から考えられる以上のものをもっていた。それは単に「記憶」といえば了解できるものだけではなかった。記憶を保護しながら、しかし記憶を再現するのではない、その先へ、ボナールは向かった。むしろ記憶を維持し、反芻し、様々な構成上の試行錯誤をしなければ描けなかった「何事か」があったのだ。そして、それを守ることができなければ、それはたちまち「まるで蜘蛛か痰のようなものだと口走ったことになってしまうのである。」。ボナールが興味深いのは、あるいは最後までマニエラに陥らずにいられたのは、不定形なものもその一部に含めた世界・宇宙全体と交渉することで成り立つ「哲学」を探し続けたからではないだろうか(だから、不定形なものと「哲学」を二分して考えるバタイユは、ボナールに比べてあまりに単純なのだ)。そしてそれゆえに、ボナールには絶えることのない謎が、謎という言葉が適切でないならば問いかけが、大きな淵を空けていた。それは安直な心理主義とは関係がない。世界を揺り動かし、溶融させ、かつ再結晶化させる何事かへの視線、まなざしがボナールにはある。
 ボナールが絵画表面に代理され表象されているのではない。絵画表面にあるものがボナールを造形している。ボナールを形成したあらゆる揺れを、力を見逃さないよう、注意深くボナールの絵画を追ってみたい。