目で触る・目でまさぐる

TOKI Art Spaceで、多田由美子展を見てきました(http://paper.cup.com/toki/tada2.html)。
この作家の展示を見るのは2回目なんだけど、前回(2003年8月)の個展の時よりも、表現が明快になってきたなーとおもいました。前回同様、余白の多い画面に薄く溶かれた絵の具の色面が大小さまざまな大きさで配置されていますが、抽象画ではなく、ある風景(光景)を描いたものだということが分かります。

この作家は、まるで目で触るかのように、目でまさぐるかのように、風景を見ます。たんに目に映ったものを描くのではなく、目に映ったものを、改めて、もう一度、目で触り(探り)にいくのです。その結果、手応え(目応え?)があったものを、注意深く、慎重にキャンバスに書留めます。こう書くと、この作家はあるボリュームをもった物ばかり描いていると誤解されそうですが、実作を見ると、「もの」のある所ばかりではなく、「ものとものとの間」に絵の具の置かれ、物自体は、空間を描くことで、その後から浮き上がってくることが往々にある、ということに気づきます。

目に映る物、そしてその物と物との関係、その関係を成り立たせている「場」というもの。それは時に逆転し、関係性が物を成り立たせ、物が空間を成り立たせているように見えることもある。この作家の、「目で風景をまさぐる」静かな探求は、「図と地」とかいった、美術の世界で自明になり、手あかがついてしまったような考え方を壊すような、粘り強さを持っています。

見る、ということを、こんなふうに丹念に続けていくと、世界は普段とは違った容貌を見せてくるのでしょう。目で触る、というのは、案外ある種の恐さを伴った行為かもしれません。

info
多田由美子展
〜4月4日(日)まで
A.M.11:30-P.M.7:00 (最終日P.M.5:00まで)
地図はこちら
http://paper.cup.com/toki/tokimap.gif