焼け野原の不在/メタボリズムの未来都市展

twitterに投稿した森美術館メタボリズムの未来都市展」関連のツイートを転載します。本来ならばまとまったエントリにすべきなのですが、諸事情で時間がとれず。

※1月8日のツイートを追加しました。

  • メタボリズム展、思うところあれど展示としては充実していたんではないですか。丹下の東京計画と築地再開発のCG再現(芝浦工大)は子供が喜んでた。僕としては序盤の「大東亜道路を主軸としたる記念営造計画」再現CGが印象的だった。
  • そりゃ「導入者」として丹下を入れ、影響を受けた磯崎新をいれ、としないとボリュームが埋まらないのはわかる。しかし若干主客転倒しているというか、丹下と磯崎のプランばっか記憶に残るという。
  • 別に周辺領域をどんと導入するのはかまわないので(実際深い影響関係があったのは事実なんだし)、それこそもう少し展示の配置や構成で、コアのメタボリストをきちんとフレームアップし、周辺関係としていろんな人を出せばよかったんではないかなと。
  • あの森美術館の構造も、展示の印象や記憶をごたまぜにしやすいかなとも思った。カタログでリファーすればいいのかもだが、あんた、今時展覧会のカタログ一冊4800円は高すぎないか。英語版は6300円て、この円高のご時世、外国人客はそれこそ目向かないの?
  • まぁ初手から都市開発のデベロッパーの森ビル資本の大規模都市開発万歳コマーシャルなんだと思えばナイス商売なわけだが、もう少しショーアップを抑えて学術的に厳密なものであってもと、無理な希望は言いたくなる。
  • あと、丹下をフォローアップした結果、戦中の「大東亜道路を主軸としたる記念営造計画」と広島の平和記念館で「戦争」を出発点に刻んだのはよいとして、なぜ六本木のあの高層ビルで、会場の一部から町並みも見える会場で、東京大空襲の焼け野原を大パノラマで見せないのか原理的に謎。
  • 白井晟一の原爆堂プランも入って、磯崎のミラノトリエンナーレの広島の廃墟にメガストラクチャーを仮構したパネルも出して、しかし戦後「東京」の瓦礫の野原は隠れてしまう、というのは、基本的に戦後復興した東京から発信されたメタボリズムを考えた時、片手落ちではすまないと思うけど。
  • ちなみに「近代建築 1960年11月号 特集 グループ・メタボリズム」が南洋堂書店で21,000円の値で売られてた。。
  • 無論森ビルがやるメタボリズム展で広島の記憶ばかり物語化されつつ、東京の焼け野原が不可視にされてしまうというのは片手落ちとかいう話ではなく抑圧、と呼ぶべきもので、不景気なご時世のデベロッパの「あーあの頃は景気よかったなー」という繰言展以上のものを求めるのが無理なんだろうな。
  • なんか批判的なことばかり書きましたが、勉強にはなるし模型もいろいろ面白いし万博関連のパンフレットの展示とか楽しいし(ソ連館のパンフは中身見たかった)、展望パノラマは冬の澄んだ空気で美しかったし、興味ある方は是非。メタボリズム展。
  • メタボリズム展、どうせ周辺領域を広くカバーするなら、以前書いた浅田孝のことをもっと掘り下げてくれてもよかった(無論、ある程度名前は出てきます)。
  • 浅田彰を呼んで磯崎新と、浅田孝について話したらみたいなネタを出したけど(以前のまとめはこちら。僕の誤字多数ですいません。http://togetter.com/li/188825)、本気でそんなの考えてもよかったんじゃないかと。だって磯崎新と比べても、ど真ん中でしょう。
  • というかリツイートしておこう。RT @cezannisme この前のシンポジウムでは浅田さんはあまり浅田孝さんのことを話すのを好まない感じでした。展覧会に遺族がぞろぞろ出てくるのは醜悪だみたいなことを仰っていて。


追加(1月8日)

  • こう思うとメタボリズム展への最大の不満は成長にばかり注目し「衰退」の観点から捉えなおす点がほとんどなかったところだな。新陳代謝には当然老化とか死のフェーズがある筈で、高度成長期的「発展」ばかり捉えて縮退に目をつけなかったから現代的足りえず回顧的なものになった。
  • かろうじて反-成長のフェーズを捉えたのは菊竹清訓のエキスポタワー解体の記録くらいで、あとは成長成長のオンパレード。今の問題点を正確に把握してれば、たとえば黒川のカプセルタワービルの解体問題とかも合わせ「衰退」こそを中核的なモチーフにすべきだった筈ではないかな。
  • 日本の経済環境とか政治もそうだし、端的に東日本大震災後の建築に関するあの規模の展覧会で、「衰退」「再-廃墟化」を打ち出せなかったことはメタボリズム展の大問題だと思う。結局「終わった運動」としか見えない。アクチュアリティがない。
  • さらに踏み込めば、メタボリズム展はあの規模の都市計画(丹下の東京計画とか)において、エネルギーに関する論及がないのも現代性の観点から言ってだめなんじゃないのか。端的に言って、原発に対し彼らがどういうスタンスで、今どう思っているのか突っ込まないのはおかしい。
  • メタボリストのえらく大規模な都市構想も、実に男性的な成長幻想の中にあるようにしか見えなくて「死」の視点がない(実際になかったのなら問題点として提示すべきだ)。
  • 要はビルダー(建設家)的でアーキテクチャー(建築家)的視点が充分じゃないのかもしれません。RT @yosaburo_ando 建築家も建築業界の一員ですから、経済の衰退は望まぬところでしょう。