VOCA展/北城貴子氏の絵画

VOCA展も終わってしまってます。こいつまで完全レビューやるモチベーションがありません。ただ、1人の作家に触れるにとどめておきます。

北城貴子氏の絵画はこんな感じでした(出品作ではありませんので注意:http://www.lisn.co.jp/series_incense/pleasure/INFORM)。
画面上に点在する、グロスメディウムを多く含んだツヤを強調された絵の具の細かい断片が、緑地や湖沼を連想させます。しかし、この作家の興味は「風景」にあるのでしょうか。たしかに風景を元に製作されていることは確かだと思うのですが、しかしこの画面を成立させているのは、基本的に「絵の具の断片と断片の関係性」によると思います。

風景から、それを「風景」たらしめている要素を抽出して、それを絵の具同士の関係性に置き換えるという作業によって、この絵は作られていると思います。その時、風景は絵の具同士の関係性を構築する上での素材であって、主題ではないのではないでしょうか。

おそらく、製作作業は『風景から、それを「風景」たらしめている要素を抽出して』という前半と『それを絵の具同士の関係性に置き換える』後半に分けられるのですが、作家の重心は後半にあるように思えます。ですから、この絵の基調色になっている緑色のバリエーションは、おそらくどうにでも変換可能なはずです。
比較的元の風景に近い色調が選ばれているのは、作家の控えめな姿勢かもしれませんし、あるいは、素材となった風景への、愛情故かもしれません。

VOCA2004の公式ページはこちら。http://www.ueno-mori.org/tenji/voca/2004/index.html