・ようやくアクセス数が収まってきて、一安心。

・先日、R.D.R(http://www.masuii.co.jp/)に呼ばれて、彼等の(というか、建築家スタッフの一人が主に担当したようだけど)手がけたお花屋さんの店舗のリノベーションの完成した姿をみせてもらってきた。壁面に設置された棚のレールが埋込まれていたり、ハバキがなかったり(壁の下がステンの材で浮かせてあり、水に濡れる床からの干渉を押さえている)、いざ花が置かれたら「建築空間」ではなく「花」が浮かび上がってくるような印象を与えるだろうと感じた。

・建築はまったくの素人だけど、仕事として、こういうのはけっこう難しいと思う。誰だって自分が作るのなら、自分の仕事が浮かび上がるようにしたくなる。そこを押さえて、花が浮かび、花が語る空間に仕上げるには、目に見えない仕事が必要になるはずだ。「何もしない」のと「されて無いように見せる」のでは、そこに積み重ねられる作業の量と質が全然違う。

・感想を求められても、どうも上手く言葉にできなかったのだけど「自分の絵を置いてみたいですね」とだけ言ってきた。

・その後、彼等のアトリエで、スライドを見せてもらった。スタッフの一人の方が、北欧に留学経験がある方で、そのとき撮影した現地の山岳地帯のヴァナキュラーな建築物の写真を見せてもらったんだけど、これが面白い。地面に埋まっている石をどけずに、そのまま基礎として使っていたり、把手が自然木だったりする。材木で作られた納屋や住居が、いろんな表情を見せるのだけど、当然現地の木材や石を使い、気象や地理条件に合わせた構造をしているので、豊かな風合いなのに統一されたトーンがある。

・その人が行っていた大学も含めて、国全体で外国人の受入が自然に行われているらしい。移民のための言語習得学校があって、そこで言葉を覚えることができる。たしかオランダにもそんな制度がある。考えてみれば、国全体で下手をすると東京都より人口が少なかったりするんだから、当然な気がするけど、もちろん「当然」じゃない。そこには相応の摩擦もあるはずで、しかもその摩擦を受け止めることを、こういった国々は制度ごと「覚悟」しているのだろう。

・都市部にはモダン建築があって、その写真もみせてもらったのだけど、山岳部のイメージからは程遠い豊さを感じた。で、その基盤は?と質問すると、「油田があるんです」との答え。北海油田だ。思わず唸る。「北欧の豊かさ」なんて、インテリア雑誌やテレビでなんとなくイメージで伝えられていて、なんとなく受け取っているけど、そのバックグラウンドにはこういうリアルな根拠がある。で、こういう話は、本を読んだりテレビを見たりしたって、皮膚感覚ではわからない。現地で生活してきた人から聞いて、始めて伝わるんだと思う。

・僕はどうも「画家」や「美術家」と話す機会以上に、職人さんとかクラフト系の作家とかデザイナーとか建築家とかカメラマンとかと話す機会が多い。場合によってはそっちの話のほうが面白いと感じてしまう。まぁ学生の時からアトリエの外でばっかり活動してきたわけで、しかたがないのかもしれないけど、もうすこし美術をやってる人から刺激的な話が聞きたいなぁ、と思っちゃうわけです。