「めからとく」展/承前・タテモノ編

東京造形大学付属美術館で「めからとく」展を見て来ました(以前も言いましたが、旧高尾校舎組としてはまったく母校に来た気がしません)。

展覧会に触れる前に、初見に近い建築物の印象を書いておきます。校舎の設計は磯崎新アトリエだそうですが、建設前に遺跡が見つかってしまったりなんだりで(某大学みたいに「遺跡を埋めちゃう」勇気はなかった模様)、工期が短縮され、当初のプランニングとは大幅に異なったものになっているようです。苦労が忍ばれます。

丘をまたいで立つ本部棟自体がキャンバスのゲートを兼ねています。そこをくぐると、ハの字型に遠近感を強調して置かれた教室棟の先に、白井晟一原案の美術館が立っています。この効果は、内部に入り込んで、後ろを振り返るとわかります。おもいがけず本部棟が間近にあることが感じられ、視覚的錯覚によって、広さと距離を大きく見せられていたことがわかります。

個々の構造物に関してですが、一見まとめられた単一のボリュームに見える校舎が、実は複数のユニットの連結によって構成されていることに気づきます。それを意図的に強調しているのが、校舎の使用用途ごとに色分けされた色彩設計です。

正面左翼校舎にはいくつかの別の構造物(大教室のようです)が組み込まれ、右翼校舎には図書館が連結しています。視点の集まる美術館だけは塗装されることなく、素材の石の色のままで差別化されています。コリド−ルのような通路があるかと思えば、その背後の大教室群はH鋼フレームによってモダンなテイストになっており、典型的なコラージュの手法で作られています。右翼校舎ユニットをくぐると工房と食堂、教室が組み合わされた別のユニットがあり、これもお互いが緩やかなジョイントでまとめられています。

その先には絵画棟と彫刻棟がありますが、ある意味ここが一番イケてます。使用する学生達によって、当初建てられていたスタジオが、無闇に拡張されているのです。プレハブが増築されていたり、スタジオ前の道路がまるまる彫刻作業場になっていたりします。このあたりは恐らく大学側と学生の協議の上、業者を呼んで設置したと思えますが、絵画科のスタジオ軒先を利用した極小の展示スペースやFRP作業スペース、ゴミ置き場などはほぼ学生の手作りと思えます。建築の統一性をまったく無視して、作業上の必要性に応じてアメーバーのように奇形的に変形していくこの空間が、最も面白い場所となっているかもしれません。

全体に視覚性優先の建築物と思えましたが、新校舎とはいえすでに10数年の歴史をもっており、使い込まれることで絵画・彫刻棟のような表情を見せているところのほうが魅力的です。

白井晟一原案の美術館は、厚みのある石壁に細長いスリットが入っている、典型的な「白井晟一言語」がありますが、内部空間は装飾性が低く、よくも悪くもすっきりした空間で、どのくらい原案者のイデアが埋められているかは不分明です。ただ、全体のボリュ−ムの「小ささ」には面白さを感じました。ああいったボリュームは、あまり他で経験したことがありません。

明日は展覧会のレポを。