アトリアの搬入をしてきた。ぼくにとって殻々工房での展示は思いのほか大きな経験だったことがよくわかったのは作品設置の時で、要するに空間の広がりや壁面の質をじっくり観察して、白いキャンバスに絵の具を置くように作品の位置を確定してゆく、その感覚が殻々と同じだったのだ。だから、殻々工房での展示も今回の展示も、まるで絵を描くような楽しさがあった。もちろん、いままでだってある程度はそういう面はあったのだけど、殻々の壁面は1枚が長く間に柱などの障壁がないしアトリアは単純に広い。その結果、展示空間に対する作品配置の自由度が高いのだ。


大変だったのは光の調整で、高い天井に照明がたくさんついているのだが、この天井が高すぎる。鉄の大きな作業用リフトを最大に伸ばしてもまだ足りず、なんとその上に更に脚立を建てなければ照明まで手が届かない。自慢では無いが僕は高い所が本当に苦手で、リフトに昇るだけで不安なのに、脚立にのったらもう絶対下なんか見られない。鉄のリフトが絶妙にガタガタ言うし、もちろん脚立は下がフラットでないので少し重心を動かすと傾く。誇張抜きで冷や汗ダラダラだった。最初はあまりの恐さに、照明の調整なんか放棄してしまおうかと思ったくらいだ。何度か昇るうちに、ちょっとだけ我慢できるようになったが、なんだかんだ言って落ち着いた照明調整をしていた他の人にくらべて、僕が最後まで一番へっぴり腰だったと思う。


それでもまぁなんとか照明作業も終え、壁面のパテ埋めとかしながらいつしか夕方になっていったのだけど、あと閉館まで1時間を切ったところで、なんだか照明の感覚が狂っている気がしてきた。ちょっと周りの人にも相談したのだけど、どうも画面が見にくい、ということなので、もう別室に片付けられていたリフトをもう一度持ち込み(一人では動かせないから、もちろん手伝って頂いた)、これで決まり、としていた状態からさらに調整した。展示の場数も踏んで慣れたつもりでいても、このくらいのどたばたは引き起こしてしまう。意外なくらい外の光りの影響を受ける展示室で(出入り口についたてがあるのだが、それでも天気や時間帯であかるさが全然ちがう)、はたしてベストなコンディションと言えるかどうか不安(というより、一定に保つのが不可能)なのだが、できることはやったつもりだ。


というわけで、今日から24日(日)までという短い期間ですが、ぜひとも御高覧頂きたくお願い申し上げます。川口は新宿からも東京からも電車で20分くらいです。僕は23・24日は全日会場にいますので、よろしかったらお声がけください。地図は以下。