・「組立」の初日から4日ほど経った。会場に全ての時間いられるわけではないのだけど、来場される方はずいぶんと丁寧に作品を見て下さる方が多いように思う。気にかけているアーティストの方々なども来てくださって、本当に嬉しく思います。また、不在中にいらして下さった皆様にも謝意を申しあげます。


・自作に関しては展示に対して質問されることが多いけど(それはまぁそうだろう)、それも含めて、けして自分の作品に関して、決定的な、安定した答えを持っているわけではない。このblogで、よく人の作品について書いている事からすれば奇異に思われるだろうが、自作に関しては自分でも驚くほど言葉が貧しくて、慌てる。がんばって答えるなかで、思いがけず出てしまった言葉に自分で驚いたりして、言ってから「そんなこと考えてたのか」と再確認することがある。


・それはけっして口からでまかせを言っているのではなくて、いろんなプロセスを経て作られた作品に対して、意識化されていないものがかなりの程度紛れ込んでいて、いわば、観客の方から言葉を投げかけられることによって、自分の作品をまったく新しい角度から検討する契機を頂いているのだと思う(これこそ今回フリーペーパーで上山和樹さんに書いて頂いた「素材化」ということか)。これは話さなければ成立しない、とかそういう事ではなくて、無言で見て下さっていたりしても成り立っている。だから、肯定的にせよ疑問に基づくものにせよ、そういう契機を下さることは心底ありがたく思う。


・私と対照的に上田さんは質問に対してほとんどブレることのない、かっちりした返答をしていて、流石だなぁと思わせられる。昨日の日曜日は、上田さんと二人で会場で話したことが面白くて、印象的だった。お互いの作品に関してはもちろん、少々ゴシップ的なことから、美術全般に対して、またいくつかの具体的な作家・作品に対して、いろんな話を交換している。専用blogでも書いたけど、私と上田さんはずーっと、わずかにしか会わないし不用なことをあまり話さないという関係でこの9ヶ月くらいを過ごしてきているので、今になって初めて知ることがたくさんある。


・個々の作家や作品については、お互いの評価や考えが食い違っているところもある(あたりまえなのだけど)。そこは違う、そこは接点がある、という話が、これだけフラットに話せる人も珍しい。というか「組立」ってそういうものなのだった。多分一番食い違ったのがベーコンに関する評価で、これは私がマスターピースを見ていないからではないか、という話になった。意外だったのは私が前から重要だと考えていたジャコメッティの絵画を、上田さんも高く評価していたことで、ジャコメッティの絵画作品擁護の他人というのを初めて知って驚いた。私は彫刻よりも絵画の方がずっと重要だと思っているくらいで、ただなかなか実物が見られない(というか、国内にあるのかどうかも知らない)。一度ジャコメッティの絵画については突っ込んで考えてみたいのだけど、実物を見た事がないのでは話にならないので困ってしまう。


・フリーペーパーは意外と順調にはけている。前回は、古谷利裕氏という、まさにあのとき「時の人」だったパートナーの記事があったので、川口であってもかなりのペースでなくなっていったのだけど、やはり上山和樹さんという存在は大きかったのかもしれない。普段美術に興味の無い方が会場に来て下さって、なおかつ上山さんの思考に新たな角度からアクセスしてくだされば、私としては嬉しい。


・古谷さんが、前回「組立」に書かれたtxtが公開されています。フランケンサーラーという重要な、しかしびっくりするぐらい日本では見ることができない作家に対する、貴重で真摯な論考です。ぜひこの機会に、より広い範囲の方々に読まれるべきものだと感じます。下記に当該記事にリンクします。