子供はなかなか歩きたがらなかったが、家の近くの細長い公園の、わきの入口から中に入ってみたら、すっと私の腕の中から降りてしばらく立っていた。公園全体がゆるやかな傾斜地で、中央を上手から不定形に抉った形をしている。夏場はそこに水が流されているのだけれども、今は干上がっていて部分的には補修工事もされている。日曜日の午前だから、作業は行われていなくて静かだった。ときおり車が近くを走り抜けた。鳥が、規則的な、ぴーぴーという声を響かせていた。よく晴れていて、風は少しあったけれど温かな日差しを感じた。ところどころに植えられた樹木の影に入ると寒かった。子供はそのまだらの温度差のある、影と日向の境目に立って、しばらくじっとしていた。それからふいに歩き出して、芝生の枯れた土を踏みながら水のない池に降りていった。1時間近くも彼を抱えていた私は上半身が少し浮いてしまうような感覚を感じつつ、危なっかしい2歳の足取りを追った。子供はくぼみに降りてからまた少し止まって回りを見ている。後ろに立っていると、またついっと動き出す。歩く、というよりは前に重心が倒れる、その倒れ込みを支えるようにつぎつぎと左右の足が出て行く。大人の様にしっかりと、着実に「歩く」という感じがない。ずうっと倒れ続けているかのように見える。私は子供の動きにつられるようについていく。つっと歩いては止まり、くぼみの縁に積まれた石を階段代わりにして上ったり、また降りたりする。そのいちいちについて行く。鳩が二羽、急に私たちの背後から滑空してきて、10メートルくらい前の地面に降り立った。子供は動きを止めて鳩を見た。おお、と声を上げて駆け寄っていった。鳩は飛び立ってすぐそばの樹木の枝にとまった。