「組立-転回」更新・「大正モダンの問題・木村荘八展について」

上田和彦さんと続けている「組立-転回」の対談を更新しました。今回は「大正モダンの問題・木村荘八展について」となっています。


大正時代、急激なポスト印象派の吸収を進めつつ岸田劉生と共に活動し、後に油絵の具で江戸の雰囲気を持った東京の風俗を描くというアクロバティックな代表作群を産み出した木村荘八を起点に、広く関連する話題を話しています。


江戸期に中国文化の影響下にあった日本では、芸術(家)という、アバンギャルドの側面を持った西欧モダニズムの導入は、いわば「国策としての近代化」の一局面でもありました。結果として、様々な矛盾が日本近代絵画に内包されます。このような状況の特異点として木村荘八を見る時、初期の岸田劉生の影響下で描かれた地面のモチーフが「国民の国土」として眼差されたこと、昭和恐慌以降の政治的緊迫感の中での永井荷風「墨東綺譚」の挿絵画家としての成功に、小春日和としての大正ブルジョア文化への回顧的欲望が見いだし得ること等が、対話の中で検討されます。全体に木村の「昭和の挫折」が、日本全体のそれと密接に関わっている様子として見えるように思います。


さらに、ここから東京駅及び東京ステーションギャラリーの改装の批判的な検討、白樺派の確かな作品選択眼の確認なども。最終的には現状の政治・経済・美術状況などとも繋がりますので、関心ある方は是非。


冒頭、東京ステーションギャラリーでの展示が終わっている旨述べていますが、豊橋市美術博物館に現在巡回中ですね。7月7日まで。


さらに栃木県の小杉放菴記念日光美術館で、7月13日から8月25日まで展示があるようです。