2011-01-01から1年間の記事一覧

色彩の速度と時間/加藤陽子個展「命の言葉」

雨が降り出した時に発生する感覚には複雑なものがある。ふと顔に水気が落ちた、その瞬間に雨かな、と思う。そしてその最初の一滴が、ぱらぱらと無数の落下してくる雨粒にかわる。地面には点々と黒い水跡が増えてゆく。耳にはかすかな、そしてやがては確かな…

内容の剥離した光の部品

ARATANIURANOで渡辺豪「lightedge─境面II─」展。 1.暗くされた会場にプロジェクターで3面、映像が映されている。最も大きな映像には本の小口面が水平に、画面上部から次々と降りて来る。 2.会場の角にやや小さい画面が二つ映されていて、どちらにも夜と思わ…

切り取られた世界の傷口/中平卓馬写真展「Documentary」

BLD Galleryで中平卓馬写真展「Documentary」。展覧会を見て、何かを語る気が起きない、という経験がある。面白さが分からなかったときもそうだが、見て、そこである種の幸福感に包まれて、それで気持が終わってしまうこともある。今回の中平卓馬展を見ての…

幻想の折り畳まれた襞あるいは夢

座間のギャラリー・アニータで上田和彦 片岡雪子展。カントの言う「物自体」が人の知覚に現れることはあり得ない。「物自体」は認識の地平線の向こうにある。それを例えばイメージの破れ目、というようなもので垣間見せるなどということは定義上不可能だ(に…

twitter作品評・「絵兎(えと)」展での上田和彦氏の作品

吉祥寺のGallery Face to Faceで開催中の「絵兎(えと)」展に出品されている上田和彦氏の小品について、twitterで作品評のようなものを試みました。140文字という制限、またフォロワーの方のタイムラインに刻々と現れては流れ消えていくメディア上での作…

グループ展のお知らせ

下記の要項で開催される展覧会に出品します。新作を3点ほど。また床に近い設置になりそうです。 ●Mixjamは見た22 開催機関:2011年2月15日〜20日 会場:古河街角美術館 開場時間:9:00〜17:00(15日は12:00から、最終日は15:00まで) 出品者:阿部雅昭 内海…

現在進行中の中東の動きに関して

現在進行中の中東の動きに関して、ミュージシャンの佐藤龍一さんがblogにてご自身のお考えを記されています。その際参照していただいた私のtwitterでの発言もまとめて下さっています。ご一読下さいませ。 http://blog.livedoor.jp/miotron/archives/51953983…

捨てられるキャラクターの見る夢

「涼宮ハルヒの消失」という映像作品は成功しているのか、それとも失敗しているのか。例えばこの作品の中の「普通の長門」。普通の世界の普通の女の子が普通に描けていなかった/普通の日常とファンタジーの対比が上手く行かなかったので失敗だ、と言ってし…

画家にとって、静物のモチーフを組むという行為は絵を描くことと同等の意義を持つ。というか、モチーフを組むところから既に制作は始まっている。例えば美術学校に通う生徒への指導として、彼ら自身にモチーフを組ませることは(少なくとも私が学生だった頃…

三菱一号館美術館で「カンディンスキーと青騎士」展。2回見た。展覧会を複数回見るのは、いつものこととは言わないまでもたまにあるのだけれど、今回の展示は、1回目を見たときから、これはまた見にこなければならない、と思っていて、それはたまたま時間…

●●さま永瀬です。「ゴダール ソシアリスム」見てきました。面白い、というのとは少々違う(刺激的だったし喚起的でしたけど)、結構泣けて笑える、というか、シリアスな問題が、まさにシリアスであるが故に滑稽にならざるを得ない、みたいな瞬間があってグッ…