消す力と描く力の応答/児玉靖枝 「深韻 2011 -わたつみ-」

恵比寿のMEMにて児玉靖枝 「深韻 2011 -わたつみ-」展。僕が児玉靖枝という人の作品を初めて見たのは1995年の「視ることのアレゴリー」展(セゾン美術館)で、その、大胆なストロークと、キャンバスの白あるいは拭き取られた中間調子の鮮烈さが印象に残った…

感情と形式が結びついたリズム/芸大コレクション展

東京藝術大学大学美術館で「芸大コレクション展―春の名品選」。同時に開催されていた「香り かぐわしき名宝展」は興味なかったのだけれども、国立西洋美術館でレンブラントを見た後iPhoneでチェックしてみたらコレクション展だけなら300円で見られる、と分か…

間接性が育む親密さ・レンブラント光の探求/闇の誘惑展

国立西洋美術館で「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」展を見て来た。レンブラントの銅版画に焦点を当てた展覧会で、すごく充実していた。レンブラントの銅版画の魅力はもっともっと知られていいと思うし、その力はおよそ一般的な版画というイメージを超えて…

フェノメナルなプラネタリウム/ART TRACE GALLERY・高木秀典展

両国のART TRACE GALLERY・高木秀典展。この展覧会に展示されている作品は3系統に分けられる。 アクリル板のブロックが4つ、壁面から浮かされて菱形に並べられた作品 正方形のアクリル板が裏面に、十字の星型(手裏剣のような形)にマスキングされてスプレ…

生まれ直す色彩の飛び出し/なびす画廊・杉浦大和展

京橋のなびす画廊で杉浦大和展を見て来た。私は2004年から(1回くらい見逃しつつ)年に1度の杉浦展を見てきている。そして氏の作品について一度も文章を書いたことがない。今まで杉浦氏の、キャンバスに油絵の具で描かれた絵画を形式的に記述し、そこで引き…

暴走する自転車小屋の夢

自転車小屋を作った。市販されているキットで、昨年の今頃作ったデッキに比べればまったく楽な仕事なのだが、こういう、地面に建てるもので一番大変なのは基礎作りになる。上の構造物が倒れないように、ある程度丈夫に、かつ水平・垂直の精度を下げないよう…

詩の切開する場/サイファー(Bottle/Exercise/Cypher vol.7)

恵比寿で行われていた詩人による朗読イベントのサイファー(Bottle/Exercise/Cypher vol.7)に行ってきた。 ●4月29日(祝)のサイファーへの呼び掛け(下記に各国語訳あり) http://d.hatena.ne.jp/CAMPCYPHER/20110413 今日は午前中から家の自転車小屋を…

未来に届く確信/フェルメール地理学者とオランダ・フランドル絵画展

Bunkamuraで「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画」展。フェルメールの「地理学者」は2000年の大阪市立美術館「フェルメールとその時代」展で見て以来の再見になる。 フェルメールは妙な危険性を持っていると私は思う。それを見た人は何か…

現代が剥ぎ取られた現代美術/MOTアニュアル「世界の深さのはかり方」

東京都現代美術館でMOTアニュアル2011「世界の深さのはかり方」を見てきた。この展覧会は2011年2月26日から開始され、5月8日まで展示される予定だが、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって一時展観が中断され、今でも開館時間が変則的に改定されて…

絵画と見るものの間で交換される揺れ/有原友一展

今年(2011年)3月11日、私は都内のビルの4階で東北関東大震災を体験した。この地震と、その後の繰り返される余震が一方的・暴力的な「揺れ」の感覚なのだとするならば、ART TRACE GALLERYで開催中の有原友一氏の作品が与える「揺れ」は、見る者-それは一義…

さらに付記

書本&cafe magellan様より営業再開のお知らせがありました。 http://magellan.shop-pro.jp/

付記

なお、仙台にて書籍「組立」をお取り扱い頂いていた書本&cafe magellan(マゼラン)様(http://magellan.shop-pro.jp/)はご無事とのご連絡を頂きました。営業の再開はいまだ未定とのことですが、ともかくも被災地の皆様に平穏が訪れます事を祈念いたしてお…

書籍「組立」の売上寄付に関するご報告

昨年、人形町Vision'sにて開催した第3回「組立」(http://kumitate.org/)に併せて発刊した書籍「組立」(http://kumitate.org/book/)の売上残高10万円を、日本赤十字を通じて東北関東大震災義援金として寄付しました。 ●日本赤十字社・東北関東大震災義援…

この場所でのシュルレアリスムの不可能性、あるいは岡本太郎の虚無に至る道

国立新美術館でシュルレアリスム展。私はシュルレアリスム、というものがよくわからない。個々の作品の魅力が分からない、ということではない。また、定義や意義がわからない、というわけでもない。シュルレアリスムは日本で、この種の西欧の美術ムーブメン…

色彩の速度と時間/加藤陽子個展「命の言葉」

雨が降り出した時に発生する感覚には複雑なものがある。ふと顔に水気が落ちた、その瞬間に雨かな、と思う。そしてその最初の一滴が、ぱらぱらと無数の落下してくる雨粒にかわる。地面には点々と黒い水跡が増えてゆく。耳にはかすかな、そしてやがては確かな…

内容の剥離した光の部品

ARATANIURANOで渡辺豪「lightedge─境面II─」展。 1.暗くされた会場にプロジェクターで3面、映像が映されている。最も大きな映像には本の小口面が水平に、画面上部から次々と降りて来る。 2.会場の角にやや小さい画面が二つ映されていて、どちらにも夜と思わ…

切り取られた世界の傷口/中平卓馬写真展「Documentary」

BLD Galleryで中平卓馬写真展「Documentary」。展覧会を見て、何かを語る気が起きない、という経験がある。面白さが分からなかったときもそうだが、見て、そこである種の幸福感に包まれて、それで気持が終わってしまうこともある。今回の中平卓馬展を見ての…

幻想の折り畳まれた襞あるいは夢

座間のギャラリー・アニータで上田和彦 片岡雪子展。カントの言う「物自体」が人の知覚に現れることはあり得ない。「物自体」は認識の地平線の向こうにある。それを例えばイメージの破れ目、というようなもので垣間見せるなどということは定義上不可能だ(に…

twitter作品評・「絵兎(えと)」展での上田和彦氏の作品

吉祥寺のGallery Face to Faceで開催中の「絵兎(えと)」展に出品されている上田和彦氏の小品について、twitterで作品評のようなものを試みました。140文字という制限、またフォロワーの方のタイムラインに刻々と現れては流れ消えていくメディア上での作…

グループ展のお知らせ

下記の要項で開催される展覧会に出品します。新作を3点ほど。また床に近い設置になりそうです。 ●Mixjamは見た22 開催機関:2011年2月15日〜20日 会場:古河街角美術館 開場時間:9:00〜17:00(15日は12:00から、最終日は15:00まで) 出品者:阿部雅昭 内海…

現在進行中の中東の動きに関して

現在進行中の中東の動きに関して、ミュージシャンの佐藤龍一さんがblogにてご自身のお考えを記されています。その際参照していただいた私のtwitterでの発言もまとめて下さっています。ご一読下さいませ。 http://blog.livedoor.jp/miotron/archives/51953983…

捨てられるキャラクターの見る夢

「涼宮ハルヒの消失」という映像作品は成功しているのか、それとも失敗しているのか。例えばこの作品の中の「普通の長門」。普通の世界の普通の女の子が普通に描けていなかった/普通の日常とファンタジーの対比が上手く行かなかったので失敗だ、と言ってし…

画家にとって、静物のモチーフを組むという行為は絵を描くことと同等の意義を持つ。というか、モチーフを組むところから既に制作は始まっている。例えば美術学校に通う生徒への指導として、彼ら自身にモチーフを組ませることは(少なくとも私が学生だった頃…

三菱一号館美術館で「カンディンスキーと青騎士」展。2回見た。展覧会を複数回見るのは、いつものこととは言わないまでもたまにあるのだけれど、今回の展示は、1回目を見たときから、これはまた見にこなければならない、と思っていて、それはたまたま時間…

●●さま永瀬です。「ゴダール ソシアリスム」見てきました。面白い、というのとは少々違う(刺激的だったし喚起的でしたけど)、結構泣けて笑える、というか、シリアスな問題が、まさにシリアスであるが故に滑稽にならざるを得ない、みたいな瞬間があってグッ…

横浜美術館でドガ展。21年ぶりにこの重要な作家の展示が実現したことは、やはり素晴らしいことと強調しておきたい。オルセーが改修してくれて(そして重要作品を貸し出してくれて)本当に良かった。マネ展のときの境澤邦泰さんのように「このまえオルセー…

川村記念美術館でのバーネット・ニューマン展が終了した。この企画が今の日本で実行されたことの貴重さを確認したい。バーネット・ニューマンが今の今までまともに紹介されなかったという事実は、「恥」以外の何物でもなかったのだし、このような「恥」を、…

・ギャラリー小柳で池田亮司展。池田亮司の音楽にとっての視覚的要素はなぜ必要なのだろう。このような問いは間違いで、本来池田亮司の「作品」の要素として音と視覚がある、と考えるべきなのだろうか。しかし池田氏の「作品」にはCD(音源)だけのものもあ…

勿論メールでの御注文も承っております。

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書籍「組立」はwebの他、以下の場所で販売しています。

取扱い店が増加しています。書籍の詳しい内容はhttp://kumitate.org/book/をご覧ください。 ■ジュンク堂新宿店、渋谷店で書籍「組立」販売しています。池袋店でも置かれます。京都BAL店でも取扱い予定。 また、全国のジュンク堂でも書籍「組立」は御注文頂け…