2008-01-01から1年間の記事一覧

出光美術館での「ルオー大回顧展」はもう終わってしまった。ちょっと前に見た松下電工汐留ミュージアムでの「ルオーとマティス」展(参考:id:eyck:20080513)で感じたのが、ルオーの「黒の鮮やかさ」なのだけれど、その印象は今回の展示でも変わらない。ル…

三の丸尚蔵館で「帝室技芸員と1900年パリ万国博覧会」展の1期目。東京駅から、暑いとはいえ最悪、というほどでもない日差しの中を、それでもビルの影を拾いながら大手門まで歩いた。皇居の堀は緑で、白鳥が映えている。タンクトップの白人女性が橋のたもとに…

「対決−巨匠たちの日本美術」全試合ジャッジ

●運慶×快慶 出品作はどちらも地蔵像1体づつ。運慶は「地蔵菩薩坐像」(鎌倉時代・12世紀後半 京都・六波羅蜜寺蔵)、快慶は「地蔵菩薩立像」(鎌倉時代・13世紀 奈良・東大寺蔵)。どちらも重文。これだけ見るといかにもフェアな試合設定に見えるが、実質的…

今年は義兄の新盆だった。その他にも予想外のトラブルがあって大変だったのだけど、展覧会はいくつか回ることができた。その中でいかにもblogネタ的だったのが東京国立博物館の「対決−巨匠たちの日本美術」展で、もうこれは企画者が「エントリしろ」と言って…

Bunkamuraで「青春のロシア・アヴァンギャルド」展。充実しているとは言いがたいが、そのことでかえってロシア構成主義の周辺、というかその裾野の広がりのようなものが理解できる展覧会になっている。十分な完成度に達していない作品、夾雑物が多く混乱して…

昨日の晩、テレビで大西巨人の特集を放送していて、なんだかいつの間にか最後まで見てしまった。私は取り上げられていた「神聖喜劇」を1行も読んだことがない。紹介されていた粗筋だけ聞けばやや図式的な印象をもったのだけど、ニヒリズムに侵されていたイン…

上手に眠れない。別段不眠、というほど大げさなことじゃない。1日、なにをどうやっても眠れなかった日もあったけど、あとは適当にうつらうつらくらいはするのだし、日常生活が破綻しているわけでもない。言ってみれば「困ってない」のだけど、少しだけ乗り物…

金曜日の夕方は北千住con tempoに池田剛介×田幡浩一「fly」展を見に行ったのだけど、人が不在で会場には入れなかった。入口には不在時の電話番号と帰る時間が書かれたメモがあったけど、電話に出た不動産屋さんらしい人は鍵を持っていないらしく、時間が来て…

利部志穂、という人のことは、実は少し前に知っていた筈なのだ。6月にやっていた古谷利裕氏との「組立」展の最中に、古谷さんが何かの拍子に「もうすぐあるトベ?っていう人の展示が面白い…」と言っていた覚えがある。古谷さんはこの人の名前の呼び方に自信…

藍画廊で見た鈴木敦子という人の作品には、なにか特別な感触がある。この感触、というのは見た目の美しさ、というのとは少し違うし、批評的に面白い、というのでもない。なにか、自分の全身の神経を、ゆっくりと心地のよい信号が伝わってゆくような、そんな…

立原道造の設計した小屋「ヒアシンスハウス」が浦和の別所沼にあり、週末に見に行った。これがとても気持ちの良い空間で、びっくりした。詩人としての名前しか私は知らなかったのだけど、東京帝国大学建築学科で丹下の上級でもあり、学内で賞も受けるような…

両国でART TRACE GALLERY GROUP EXHIBITIONの第1期を見た。有原友一氏の作品を見て思ったのは、絵画が、あるいは作品が「良くなっていく」というのは、こういうことなのだなぁ、ということだ。有原氏の作品は2005年にやはり同じART TRACEでみている。その時…

A-thingsにて近藤学氏によるレクチャー「プロセスの系譜学―デ・クーニングから出発して」を聴講した。デ・クーニングが制作途中の自作のパーツをトレーシングペーパーに写し取り保存しておいて、それを他の作品の途中で挿入して(転写して)加筆し制作してい…

・最近は暑くなって出ていないが、先月上旬までとかはよく子供と散歩をしていた。私の家の近所にはあまり大きくない(つまりそんなに堤防とかが整備されていない)川があって、その河原を長男を載せたベビーカーを押していく。そうすると、彼が生まれる前に…

先週、南天子画廊で中村一美展を見た。150号から200号の木枠に綿布が張り込んであり、そこにステイング(染み込み)と極端な絵の具の盛り上げによるストロークが配置される。別室には小型の作品がある。絵の具は全てアクリル樹脂となっている。縦構図で占め…

上田和彦氏「アートと資本主義」再録に関して

「組立」専用blogで、昨日より上田和彦氏の「アートと資本主義」のweb再録を開始しました。 http://d.hatena.ne.jp/nagase001/20080707 上田氏による「はしがき」にもあるとおり、原文は『PUNCTUM TIMES』に4回に渡って連載されていたもので、今回はそれをbl…

hino galleryで小林良一展を見た。100号(160cm×130cm)くらいから130号くらいのキャンバスに油彩で描かれている(別室には小型の作品もある)。ほぼ全てが縦構図であり、側面にはタックスが打たれている。絵の具の塗りはマットで、あからさまなマチエールや…

・本当に美しい夏日。こんなにきれいな午後は、1年に何度あるだろう。 ・気付ば展示が終了してからもう4日以上過ぎてしまった。いつも思うが、展覧会というのはあっけないものだと思う。「組立」は小さな試みだったけれど、あの横浜トリエンナーレだって3ヶ…

次回「組立」上田和彦×永瀬恭一 展について

以下、「組立」専用blogより転載します。 ●「組立」上田和彦×永瀬恭一 期間:未定 会場:未定 フリーペーパー「組立」を、会場内で会期中のみ発行(執筆者:上田和彦・永瀬恭一他) 専用blog:「組立」http://d.hatena.ne.jp/nagase001/ 詳しくは「組立」専…

「組立」永瀬恭一×古谷利裕展は、無事終了いたしました。ご来場くださった方、ありがとうございました。

・「組立」対話企画があった21日は、重要な出会いが幾人もの人たちとあって、それを消化するのに時間がかかっている。もちろん急ぐ必要はなくて、個別の出会いを、ゆっくりと考えていればいいのだけど、今書いておきたいものもある。詩人の佐藤雄一さんのこ…

・昨日は土曜日の対話企画の、実際的な面の打ち合わせでmasuii R.D.Rに夕方寄った。会場に入ると資料スペース(とはいえここにも作品が複数あるのだが)に古谷さんの、出来上がったばかりの著書が置いてあって、手に取った。ぱらぱら眺めるだけのつもりだっ…

昨日、初日の「組立」会場ではいくつかの人の交差があった。夕方からしか寄らなかった私が出会えた人は限定的だったが、それでも良い時間が過ごせた。 私の到着前に来て下さっていたのが画家の境澤邦泰さんで、私は初対面なのだけど、挨拶もそこそこに、私の…

「組立」永瀬恭一×古谷利裕展

本日初日です。 会期:2008年6月16日(月)〜29日(日)会期中無休 会場・共催:masuii R.D.R gallery http://www.masuii.co.jp/rdr-top.html 時間:11:00am〜19:30pm 地図:http://www.masuii.co.jp/rdr-map.htm 会期中会場内限定でフリーペーパー「組立…

「組立」のフリーペーパーが完成しました。

以下、一部を「組立」専用blogから引用します。 「組立」−Re: After Abstract Expressionism− 体裁/A3裏表4ツ折り 執筆者 池田剛介「態度と形のあいだで―ブラインド・タイム・ドローイング」 内海聖史「汽水の魚」 永瀬恭一「浮遊するリチャード・セラ」 古…

美術のさいたま/image

美術のさいたま/アニメーションのさいたま(3)

話題となった「らき☆すた」オープニングにおける背景描写に注目してみる。むろん、この映像での「つかみ」は(伊藤剛氏が規定するところの)「キャラ」の動きであることに違いはない。だが、ただそれだけに最適化しているわけではないことは、イントロが終わ…

美術のさいたま/アニメーションのさいたま(2)

私が当初言い出そうとしていたのは、ごく単純なことだ。アニメ版「おおきく振りかぶって」の、背景美術として描かれた「さいたま」が、とても魅力的だった、ということだ。しかもその魅力は、テレビアニメの(宮崎アニメ的豊かさとは異なる)貧しさのもつリ…

美術のさいたま/アニメーションのさいたま(1)

どこから話そう。とりあえず、昨年放映された二つのアニメーション「おおきく振りかぶって」と「らき☆すた」に描かれた「さいたま」が気になっている。「おおきく振りかぶって」(以下「おお振り」)の原作に関しては先日書いたが、このアニメ版に関しても言…

美術のさいたま(承前)

・私は何を書こうとしているのだろう。いくつか思い付くことはあるのだけど、どれも大事なことのようでありながら今一つ焦点が定まらない。ぼんやりとしたいくつかのイメージが、どれも連続せずにバラバラにある。こんなに茫漠とした状態で書き出すのはめず…